石川

2008年08月04日

[第69話 食、農] 世界の銘茶を目指す山城紅茶

 うるま市石川の山城地区では、長い間、お茶が栽培されてきた。やまぐすく茶、と呼ばれる無農薬茶。やまぐすく茶の話は別の機会にするとして、今回は、やまぐすく茶で作られる珍しい紅茶を紹介する。「有機、無農薬、手摘み」の紅茶だ。

Kocha6


 その名も山城紅茶。山城直人さんを中心とする沖縄紅茶農園の30代の青年4人が取り組んでいる。山城直人さんの家は、祖父の代からやまぐすく茶を栽培してきた。茶畑で遊びながら育ったという直人さんは、自分の代ではぜひ紅茶に取り組もうと思っていた。山城の土や気候が紅茶向きだという話をかねてから聞いていたからだった。

 直人さんは静岡県にある国立野菜茶業試験場(現在の独立行政法人農業食品産業技術総合研究機構の野菜茶業研究所)で2年間、研修生としてみっちり学んだ。当時は紅茶専門の先生がいたので、直人さんは紅茶作りの技術を深めることができた。故郷に戻った直人さんは、仲間とともに紅茶を作る機械づくりから始めた。

 発酵していない緑茶や、発酵を途中で止める烏龍茶などの半発酵茶とは違って、紅茶は完全に発酵させたお茶とされる。だが一口に「完全に発酵させた」と言っても、発酵過程の微妙な加減で味や香りは大きく変わる。直人さんらは、1000パターンくらいのさまざまな紅茶を試作したという。

Kocha1


 そんな中から製品化したのは「コク重視」「職人仕上げ」「あっさりストレート」「スモーキー」の4種類。それぞれに番号がついているが、これは完成した日付をそのまま番号に見立ててつけたという。例えば9月18日に出来上がった「あっさりストレート」は918番。「商品それぞれの誕生日というわけです」と直人さん。冒頭の茶葉はコク重視。


Kocha3


 有機、無農薬に加え、収穫機械を全く使わない手摘み茶というのも珍しい。「機械だとよけいな部分が入ってしまうので、どうしても雑味が出てしまうんです」と直人さん。ふだんはシルバー人材センターのおばさんらが、せっせと手で茶葉を摘み取っている。この日はたまたま地元の中学生が職場体験で茶摘みに精を出していた。

Kocha4


 「コク重視」を試飲してみた。香りはあまり強くないが、ボディはしっかりしている。雑味がほとんどなく、すっきりしている。ストレートでそのまま楽しむ紅茶か。強い味を求める人は茶葉を多めに入れるとよさそうだ。

 パッケージには、くまと女の子が描かれている。どうして「くまと女の子」なのか。

 「ヨーロッパの人が見た時に、理解できるものにしたかったからです」。栽培面積は小さいから量産は難しいかもしれないが、質についてはインドやスリランカの銘茶に負けない世界水準を追求する―。この絵にはそんな直人さんたちの決意が込められている。

Kocha5


 沖縄紅茶農園はうるま市石川伊波1005、098-965-3728。店舗はないが、インターネットで販売している。「山城紅茶」で検索を。50g入りパッケージが1000円から1500円。

bansyold at 00:00|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

2007年12月28日

[第32話 食] 巨大ヤマイモはこうして食べる

 第29話でお伝えした「やまんむすーぶ(山芋勝負)」の巨大なヤマイモは、どうやって食べるのか。沖縄の農村部では、ヤマイモは旧正月の伝統的なごちそう。旧正月はまだ先だが、そこは深く考えないことにして、ことしの年の暮れはヤマイモ料理で締めくくることにしよう。

 ヤマイモの料理編は、うるま市農漁村生活研究会石川支部の新田文子支部長、山城喜代子さん、山城美佐枝さんにナビゲーターをお願いした。うるま市石川地区(旧石川市)はヤマイモ生産のメッカだ。

Yamandish1

 ヤマイモ料理の定番中の定番はこれ、ヤマイモイリチャー。作り方の前に、ちょっとだけウンチクを。

 沖縄のヤマイモには、中が白いのと紅色のとがある。料理して食べるのは白が普通で、紅色のものは、その鮮やかな色を生かして菓子類を作るのに使われる。紅はイモが大きくなるので、やまんむすーぶ用には紅を植える人が多い。

 「ヤマイモは11月から収穫できますが、旧正月の頃に葉が枯れ始め、イモが熟して一番おいしくなるんです」と喜代子さんが解説する。旧正月は新暦では2月ごろに当たることが多く、来年の旧正月は新暦2月7日だ。

Yamandish2

 さて、ヤマイモイリチャーの作り方、いきましょう。ヤマイモはアクがあるので、まずはアクを抜く。皮をむいたヤマイモを適当な大きさに切り、酢水に3時間ほどさらす。こうすれば、すりおろしてトロロにし、生で食べてもおいしい。

 次に、アク抜きしたイモに軽く塩をふってから、蒸す。大きさによるが、2、30分蒸せば柔らかくなる。冷ましてから、食べやすい大きさに切っておく。あまり薄くするとイモらしい食感が失われるので、1cmくらいの厚さに。

 豚の塩漬け「スーチカー」をこんがりといためる。脂が出てきたら、ヤマイモを加える。ヤマイモに熱が通ったら、ニラかニンニクの葉を入れ、色よく仕上げる。「(脂が出た時に)おろしニンニクを加えるとおいしいです」と文子さんが補足してくれた。

Yamandish3

 味付けは塩だけ。スーチカーに塩気があるので、全体がちょうどよくなるように味をみながら塩をふる。スーチカーのコクとヤマイモのかすかな甘味とが一体になると、なんとも言えないおいしさが生まれる。

 ヤマイモイリチャーは伝統料理だが、生活改善グループのみなさんが考えた創作料理も紹介しよう。喜代子さん、美佐枝さんのイチ押しは、ヤマイモのはさみ揚げ。これも豚との相性のよさを生かした一品だ。

 アク抜きして蒸したヤマイモを5、6mmの厚さに切る。スーチカーは3mmくらいの厚さに。濃厚な味が好きな人はもう少し厚くしてもいい。スライスしたヤマイモ2枚の間にスーチカーをはさみ、周りを海苔で巻く。全体を薄めの天ぷらのころもにつけ、油で揚げる。

 「切ると断面がとてもきれいなんですよ」と美佐子さん。ころものサクサク感とイモのねっとり感とのコントラストが楽しい。海苔の味と香りがアクセント。

Yamandish5

 味噌仕立ての汁に、ダイコン、ニンジン、昆布、豚肉などとともに、ヤマイモをたっぷり入れたヤマイモ汁も、生活改善グループの創作料理。ヤマイモはそのままだと煮くずれしやすいので、あらかじめ油でさっと揚げておく。支部長の文子さんは、全沖縄ヤマイモスーブの日、シンメーと呼ばれる大鍋で作ったヤマイモ汁を来訪者にふるまっていた。

Yamandish6

 こうして、農村部ではヤマイモ料理がいろいろと楽しまれているが、那覇などの都市部ではほとんど見かけない。ヤマイモがスーパーなどの物流に全く乗っていないからだ。

 だが、最近は健康ブームの影響もあってか、ヤマイモの人気が再び出始めているという。文子さんたちのグループでは既に20種類以上のヤマイモ料理を開発ずみ。伝統料理のヤマイモイリチャー以外にも、ヤマイモをおいしく食べる方法はいろいろある。

 家庭でも給食でもホテルでもレストランでも、ヤマイモがもっと食べられるようになることを期待したい。

bansyold at 00:00|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

2007年12月10日

[第29話 農、沖縄] 1株130kgで優勝 ヤマイモ勝負

 この写真の手前に写っているものは何でしょう。まるでアザラシが群れているみたいだが、これはヤマイモ。それも1株から収穫されたヤマイモだ。

Yaman1

 うるま市の石川地区はヤマイモの生産が盛んで、12月に入ると、1株あたりのイモの重さを競う「やまんむすーぶ」が字ごとに開かれる。分かち書きにすると、やま・んむ・すーぶ。漢字に直せば、山芋勝負。字(あざ)伊波(いは)のすーぶに行ってみた。

 ヤマイモは、4月ごろに植え、11月後半から収穫される。沖縄のヤマイモは、熱帯のヤムの正統派。つるの株元には、直径1m近くにわたって、でっかいイモがゴロゴロ実る。アジアでもアフリカでも同じようなヤマイモが各地で栽培され、食べられている。

 すーぶは、字の役員が立会人になり、間違いなく1株についているイモであることを、事前に参加者が畑で掘り出す際に現場確認する。そのうえで、参加者は12月第2日曜日のすーぶの日に会場に運び込んで、計量する。

Yaman2

Yaman4

 午前中は、班ごとにブルーシートを敷いて、計量した「出品作」を並べていく。「○○さんのは形がいいよ」「どうやってあんなに大きくするのかね」ー。重量と生産者名が書かれた段ボールの札を見ながら、参観者と生産者はゆっくりとヤマイモ談義を楽しむ。

 昼になると、婦人会や生活改善グループが大鍋で準備したヤマイモイリチャーとヤマイモ汁にみなで舌鼓を打つ。子供エイサーを披露した小学生たちも、おいしいヤマイモ料理にパクついていた。

Yaman5

 ことしの優勝は2班の呉屋孝仁さんで、1株でなんと130.5kg。大人2人分の重量だ。鶏糞をうまく使って栽培するのがコツとのこと。「ことしのはそんなに大きくもないよ。去年はもっとだったから」と呉屋さん。優勝した呉屋さんにはヤギ1頭が贈呈された。

Yaman3

Yaman6

 字伊波の場合、やまんむすーぶの日は、字の年次総会を兼ねていて、すーぶが終われば次年度の役員選出なども行う。まさに地に足のついた伝統行事だ。

 石川地区の各字のすーぶは、毎年12月の第2日曜と日程がほぼ決まっているので、興味のある人は、この日に訪ねていけばいい。ヤマイモ栽培に一家言ある地元の人が集まっているから、何か質問すればだれでも親切に教えてくれる。沖縄県民はもちろん、「5度目の沖縄」を計画中のベテラン沖縄旅行者にうってつけの催し。日程は石川地区字伊波、字山城など各字の公民館か、うるま市役所観光課098-965-5634で確認を。

 12月16日にはうるま市産業まつりで、全沖縄やまんむすーぶも開催される。ヤマイモの料理については回を改めて紹介します。


bansyold at 10:00|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック