移民
2008年03月25日
[第47話 食、南] 帰郷者が手作りするブラジルおやつ
沖縄はおやつが豊富。サーターアンダーギーやイモ天ぷらのようなおなじみの顔ぶれ以外にも、ターンムパイなど、新しく生み出されて既に市民権を得たおやつがある。ブラジルおやつも、そんな新しいおやつの世界を広げてくれる。今回は、ブラジル帰郷者の仲本隆信さん、まさみさん夫妻が手作りするブラジルおやつをご紹介。

写真はコシンヤ。仲本夫妻の店の名前にもなっている。ジャガイモのコロッケのようだが、日本の肉屋の定番コロッケとは違う。日本のコロッケはジャガイモの中にひき肉や玉ネギがパラパラ散っているが、コシンヤは、肉類があんの形で中心部にまとまって入っているので、普通のコロッケよりもそれらの味がはっきり分かる。
仲本さんのコシンヤは、牛肉、鶏肉、チーズの3種類。衣がむやみに厚くてバリバリに仕上がっていたり、化学調味料で濃い味がついているようなコロッケが多いが、このコシンヤは手づくりのやさしい味。ブラジルのおふくろの味、なのかもしれない。
次は小麦生地で作る3種。左からエスフィーア、パスティス、サルテンヤ。

まずサルテンヤは、パイ生地で鶏肉あんを包んで焼いたもの。生地の合わせ目をひねって模様をつける。肉あんにはパウミットというココナツの若芽をブラジルでは入れるが、沖縄では手に入らないので、仲本さんは代わりにタケノコを使っている。

エスフィーアは、パンのような生地に、牛肉あんが入っている。イタリアンパセリの香りがアクセント。仲本さんはイタリアンパセリを自宅で栽培して、エスフィーアに入れている。

パスティスは中に肉を入れたものだが、その応用ということで、仲本さんは沖縄のターウムを入れたものも作っている。ほんのりと甘く、もっちりしたターウムと、歯ごたえのあるパスティスの生地がいいコンビネーションを見せる。

仲本さんはうるま市に生まれたが、1959年、高校生の時に家族とともにブラジルに渡った。ブラジルはサンパウロ郊外で野菜販売の商売をしていたが、治安が悪化した1986年にまさみさんらと帰国。今から8年前に現在の店コシンヤを始めた。

沖縄は、かつて多くの人々が海を超え、南米各国に渡った。中でもブラジルは現在南米各国にいる沖縄系移民24万人の半分以上の14万人余りが暮らす。仲本さんのような帰郷者もいて、ブラジルと沖縄の草の根のかけはしになっている。
コシンヤは、うるま市田場1557-8、電話973-3074。土日祝休。午前は店舗で作りながら販売し、午後はうるま市役所地下玄関前で移動販売している。
コシンヤとターウムパイ(パスティスの応用)は常備しているが、サルテンヤ、エスフィーアは作らない日もある。欲しい場合は、あらかじめ電話して、いつ作るか尋ねてから行くとよい。

写真はコシンヤ。仲本夫妻の店の名前にもなっている。ジャガイモのコロッケのようだが、日本の肉屋の定番コロッケとは違う。日本のコロッケはジャガイモの中にひき肉や玉ネギがパラパラ散っているが、コシンヤは、肉類があんの形で中心部にまとまって入っているので、普通のコロッケよりもそれらの味がはっきり分かる。
仲本さんのコシンヤは、牛肉、鶏肉、チーズの3種類。衣がむやみに厚くてバリバリに仕上がっていたり、化学調味料で濃い味がついているようなコロッケが多いが、このコシンヤは手づくりのやさしい味。ブラジルのおふくろの味、なのかもしれない。
次は小麦生地で作る3種。左からエスフィーア、パスティス、サルテンヤ。

まずサルテンヤは、パイ生地で鶏肉あんを包んで焼いたもの。生地の合わせ目をひねって模様をつける。肉あんにはパウミットというココナツの若芽をブラジルでは入れるが、沖縄では手に入らないので、仲本さんは代わりにタケノコを使っている。

エスフィーアは、パンのような生地に、牛肉あんが入っている。イタリアンパセリの香りがアクセント。仲本さんはイタリアンパセリを自宅で栽培して、エスフィーアに入れている。

パスティスは中に肉を入れたものだが、その応用ということで、仲本さんは沖縄のターウムを入れたものも作っている。ほんのりと甘く、もっちりしたターウムと、歯ごたえのあるパスティスの生地がいいコンビネーションを見せる。

仲本さんはうるま市に生まれたが、1959年、高校生の時に家族とともにブラジルに渡った。ブラジルはサンパウロ郊外で野菜販売の商売をしていたが、治安が悪化した1986年にまさみさんらと帰国。今から8年前に現在の店コシンヤを始めた。

沖縄は、かつて多くの人々が海を超え、南米各国に渡った。中でもブラジルは現在南米各国にいる沖縄系移民24万人の半分以上の14万人余りが暮らす。仲本さんのような帰郷者もいて、ブラジルと沖縄の草の根のかけはしになっている。
コシンヤは、うるま市田場1557-8、電話973-3074。土日祝休。午前は店舗で作りながら販売し、午後はうるま市役所地下玄関前で移動販売している。
コシンヤとターウムパイ(パスティスの応用)は常備しているが、サルテンヤ、エスフィーアは作らない日もある。欲しい場合は、あらかじめ電話して、いつ作るか尋ねてから行くとよい。
2007年12月24日
[第31話 沖縄、南] ブラジル石油公社、沖縄進出のココロ
11月初め、大きなニュースが流れた。ブラジルの国営石油公社ペトロブラスが沖縄・西原町の南西石油を買収したのだ。南西石油は、沖縄県内の2006年度企業売上高ランキングで堂々1位の大企業。ただ、製油所としては能力が小さく、設備も老朽化しているため、親会社のエクソンモービルは閉鎖を含めて将来を検討していた。


そんな南西石油をブラジルが買うって、どういう意味? 分からない時は当事者に聞くのが一番だ。早速、ペトロブラスの関係者に会って、今回の進出の背景を尋ねた。
ペトロブラス関係者によると、ブラジルの埋蔵原油はかなりの量に上る。特に、11月初旬に発表された埋蔵量80億バレルに上る巨大なテュビ海底油田の発見は、世界を驚かせた。この巨大油田によって、ブラジルは良質な軽質原油を大量に確保。世界市場での販路開拓は同国にとってますます重要な課題になった。
今回の沖縄進出は、南西石油の既存施設があったことが直接の理由のようだ。製油所を新設するとなれば、巨額の資金が必要になるし、行政や地域との交渉などにも労力と時間がかかる。
加えて、沖縄の「戦略的な地理的位置」が決め手になったことを、この関係者は指摘した。「沖縄は、台湾にも韓国にも中国にも日本本土にも近いでしょう」
ペトロブラスは、沖縄で精製した石油をこうしたアジア各地で販売しようと考えている。同社はこれまで、欧米など26カ国に石油を販売してきたが、アジアへの本格的展開はこれから。その皮切りの拠点として、有利な地理的位置にある沖縄を選んだというわけだ。
沖縄県内では、東京を意識した経済振興策ばかりが語られがちだが、もう少し視点を自由にしてアジア全体をながめる必要がありそうだ。ここで、第22話の南北逆さ地図をもう一度。

沖縄のこの優位な位置を活用してきたのは、これまで、皮肉なことに米軍だけだった。それが、今回のブラジルの進出によって、「アジア最前線、沖縄」が、民間経済活動の拠点として本格的に生かされる可能性が出てきた。
この機会を沖縄側がどう活用するか。軍事拠点から脱出し、「万国津梁、再び」を実現するうえで、ひとつの試金石になるだろう。
ペトロブラス関係者は、もう一つ、興味深い話を披露してくれた。同社が、沖縄でバイオエタノールの生産にも取り組む意欲を持っている、という話だ。
バイオエタノールはトウモロコシやサトウキビから作る燃料用アルコール。ブラジルは1975年から開発に取り組み、今や世界で唯一のバイオエタノール輸出国になった。
ブラジルでは、ガソリン100%でもエタノール100%でも、あるいはどんな比率の両者のミックスでもOKというFFV(Flexible Fuel Vehicle)車が8割を占める。ユーザーは市場価格を見て、安い燃料を選べるという。
従来はもっぱら石油を扱ってきたペトロブラスも、FFVの普及により、「25%エタノール入りガソリン」などを生産し始めている。同社が沖縄でのエタノール生産を視野に入れているのは、アジアでFFV時代が来れば、同社のガソリン販売チャンネルの中に、ブラジルにとって「もう一つの得意分野」であるエタノールをほぼそのまま組み入れることができるからだ。

沖縄では、エタノールを主にサトウキビから作ることになる。亜熱帯の自然特性を生かして、沖縄が自前のエネルギー源を持てるかもしれないというのは、さまざまなハードルを超えなければならないにしても、夢のある話だ。
来年は、日本からのブラジル移民100周年。ペトロブラス関係者も、この日伯の強いきずなが今回の進出の背景にあることを強調した。100周年という節目の年に、140万日系移民の1割を占める沖縄系移民の故郷沖縄に、ブラジル国営石油公社ペトロブラスが精油所を持つ―。大いに象徴的な出来事と言えそうである。


そんな南西石油をブラジルが買うって、どういう意味? 分からない時は当事者に聞くのが一番だ。早速、ペトロブラスの関係者に会って、今回の進出の背景を尋ねた。
ペトロブラス関係者によると、ブラジルの埋蔵原油はかなりの量に上る。特に、11月初旬に発表された埋蔵量80億バレルに上る巨大なテュビ海底油田の発見は、世界を驚かせた。この巨大油田によって、ブラジルは良質な軽質原油を大量に確保。世界市場での販路開拓は同国にとってますます重要な課題になった。
今回の沖縄進出は、南西石油の既存施設があったことが直接の理由のようだ。製油所を新設するとなれば、巨額の資金が必要になるし、行政や地域との交渉などにも労力と時間がかかる。
加えて、沖縄の「戦略的な地理的位置」が決め手になったことを、この関係者は指摘した。「沖縄は、台湾にも韓国にも中国にも日本本土にも近いでしょう」
ペトロブラスは、沖縄で精製した石油をこうしたアジア各地で販売しようと考えている。同社はこれまで、欧米など26カ国に石油を販売してきたが、アジアへの本格的展開はこれから。その皮切りの拠点として、有利な地理的位置にある沖縄を選んだというわけだ。
沖縄県内では、東京を意識した経済振興策ばかりが語られがちだが、もう少し視点を自由にしてアジア全体をながめる必要がありそうだ。ここで、第22話の南北逆さ地図をもう一度。

沖縄のこの優位な位置を活用してきたのは、これまで、皮肉なことに米軍だけだった。それが、今回のブラジルの進出によって、「アジア最前線、沖縄」が、民間経済活動の拠点として本格的に生かされる可能性が出てきた。
この機会を沖縄側がどう活用するか。軍事拠点から脱出し、「万国津梁、再び」を実現するうえで、ひとつの試金石になるだろう。
ペトロブラス関係者は、もう一つ、興味深い話を披露してくれた。同社が、沖縄でバイオエタノールの生産にも取り組む意欲を持っている、という話だ。
バイオエタノールはトウモロコシやサトウキビから作る燃料用アルコール。ブラジルは1975年から開発に取り組み、今や世界で唯一のバイオエタノール輸出国になった。
ブラジルでは、ガソリン100%でもエタノール100%でも、あるいはどんな比率の両者のミックスでもOKというFFV(Flexible Fuel Vehicle)車が8割を占める。ユーザーは市場価格を見て、安い燃料を選べるという。
従来はもっぱら石油を扱ってきたペトロブラスも、FFVの普及により、「25%エタノール入りガソリン」などを生産し始めている。同社が沖縄でのエタノール生産を視野に入れているのは、アジアでFFV時代が来れば、同社のガソリン販売チャンネルの中に、ブラジルにとって「もう一つの得意分野」であるエタノールをほぼそのまま組み入れることができるからだ。

沖縄では、エタノールを主にサトウキビから作ることになる。亜熱帯の自然特性を生かして、沖縄が自前のエネルギー源を持てるかもしれないというのは、さまざまなハードルを超えなければならないにしても、夢のある話だ。
来年は、日本からのブラジル移民100周年。ペトロブラス関係者も、この日伯の強いきずなが今回の進出の背景にあることを強調した。100周年という節目の年に、140万日系移民の1割を占める沖縄系移民の故郷沖縄に、ブラジル国営石油公社ペトロブラスが精油所を持つ―。大いに象徴的な出来事と言えそうである。