豚肉
2013年04月27日
サクサクの串かつ、登場です
ことしの沖縄はこんな時期まで意外に寒さが残っています。とはいえ、初夏はもうすぐそこ。きょうから連休ですね。
ももと庵に、新メニュー「サクサク串かつ膳」が登場しました。
これまで、揚げ物をメインにした膳はなく、「揚げ物ないの?」の声もしばしば寄せられていました。
ももと庵の串かつは4本セット。早速、1本ずつ解説してみましょう。
A. 豚肉+玉ネギ+豚肉+玉ネギ+豚肉
泣く子も黙る黄金の組み合わせ、ですね。
B. 豚肉+玉ネギ+ソーセージ+玉ネギ+豚肉
Aの変形。真ん中に万鐘自慢の無添加ソーセージを入れました。
C. 豚肉+ナス+豚肉+ナス+豚肉
高温で揚げたナスの旨味は格別です。
D. 豚肉+ミニトマト+豚肉+ゴーヤー+豚肉
加熱されたトマトのおいしいこと。揚げられたゴーヤーは苦みがマイルドに。色合いもきれいです。
これまでの膳メニューと同じように、豆乳ふるふるやもずく酢など、副菜の小皿、小鉢もいろいろついていますよ。
ソースは、アジアだれで。アジアだれは、魚醤をベースに酢や砂糖、ニラなどの香味野菜を加えたオリジナル。ももと膳の冷しゃぶ用たれとして人気ですが、これを串かつのサクサクのころもにつけるとまた最高なんです。
魚醤の臭いが苦手、と言う方も多いと思いますが、ももと庵のアジアだれは、魚醤の臭いを減らしてから加えていますので、臭いを気にせずに深い旨味を味わうことができます。
きのう発売初日でしたが、早速、このサクサク串かつ膳を注文されるお客様がかなりいらっしゃいました。中には、アジアだれをお代わりする方も。
食後にミニデザート、コーヒーまたは紅茶がついて1250円です。
ももと庵に、新メニュー「サクサク串かつ膳」が登場しました。
これまで、揚げ物をメインにした膳はなく、「揚げ物ないの?」の声もしばしば寄せられていました。
ももと庵の串かつは4本セット。早速、1本ずつ解説してみましょう。
A. 豚肉+玉ネギ+豚肉+玉ネギ+豚肉
泣く子も黙る黄金の組み合わせ、ですね。
B. 豚肉+玉ネギ+ソーセージ+玉ネギ+豚肉
Aの変形。真ん中に万鐘自慢の無添加ソーセージを入れました。
C. 豚肉+ナス+豚肉+ナス+豚肉
高温で揚げたナスの旨味は格別です。
D. 豚肉+ミニトマト+豚肉+ゴーヤー+豚肉
加熱されたトマトのおいしいこと。揚げられたゴーヤーは苦みがマイルドに。色合いもきれいです。
これまでの膳メニューと同じように、豆乳ふるふるやもずく酢など、副菜の小皿、小鉢もいろいろついていますよ。
ソースは、アジアだれで。アジアだれは、魚醤をベースに酢や砂糖、ニラなどの香味野菜を加えたオリジナル。ももと膳の冷しゃぶ用たれとして人気ですが、これを串かつのサクサクのころもにつけるとまた最高なんです。
魚醤の臭いが苦手、と言う方も多いと思いますが、ももと庵のアジアだれは、魚醤の臭いを減らしてから加えていますので、臭いを気にせずに深い旨味を味わうことができます。
きのう発売初日でしたが、早速、このサクサク串かつ膳を注文されるお客様がかなりいらっしゃいました。中には、アジアだれをお代わりする方も。
食後にミニデザート、コーヒーまたは紅茶がついて1250円です。
2012年08月20日
しっとり冷しゃぶを作るには
新装開店の初回は、ももと庵看板メニュー「ももと膳」で主役をはっている冷しゃぶの話題からいきましょう。
冷しゃぶ、夏の人気メニューですね。みなさん、どのようにして冷しゃぶを作っていますか。
冷しゃぶをおいしく作る一番のコツは、豚肉をゆがく小鍋の火を完全に消すことなんです。
ぐらぐら煮立っている湯の中に、紙のように薄く切られたしゃぶしゃぶ肉を入れたら、あっという間に火が通って肉汁が出てしまい、肉がパサパサになります。
だから、湯が沸騰したら、まずは火を止めて、その後もひと呼吸置いて、そうですね、温度がだいたい80度くらいまで下がってから、おもむろに肉を入れてしゃぶしゃぶします。
色がピンク色に変わったら、すぐに引き上げて、水にさっとくぐらせれば出来上がり。氷水でキンキンに冷やすと脂が固まってしまうので、普通の水か、ちょっと冷たいくらいの水で十分です。
ゆがく鍋は小さめがおすすめ。大きいと湧いた湯がなかなか冷めません。
こんなやり方で、冷しゃぶ、ぜひ作ってみて下さい。淡いピンク色の、しっとりとジューシーな冷しゃぶが楽しめますよ。
冷しゃぶ、夏の人気メニューですね。みなさん、どのようにして冷しゃぶを作っていますか。
冷しゃぶをおいしく作る一番のコツは、豚肉をゆがく小鍋の火を完全に消すことなんです。
ぐらぐら煮立っている湯の中に、紙のように薄く切られたしゃぶしゃぶ肉を入れたら、あっという間に火が通って肉汁が出てしまい、肉がパサパサになります。
だから、湯が沸騰したら、まずは火を止めて、その後もひと呼吸置いて、そうですね、温度がだいたい80度くらいまで下がってから、おもむろに肉を入れてしゃぶしゃぶします。
色がピンク色に変わったら、すぐに引き上げて、水にさっとくぐらせれば出来上がり。氷水でキンキンに冷やすと脂が固まってしまうので、普通の水か、ちょっと冷たいくらいの水で十分です。
ゆがく鍋は小さめがおすすめ。大きいと湧いた湯がなかなか冷めません。
こんなやり方で、冷しゃぶ、ぜひ作ってみて下さい。淡いピンク色の、しっとりとジューシーな冷しゃぶが楽しめますよ。
2011年12月11日
バナナの葉に守られて発酵
沖縄とアジアの食 第13回 発酵ソーセージ
前回までは魚の発酵食品についてつづってきた。今回は豚肉の発酵食品を取り上げよう。
直径5cm、長さ8cmくらいの俵状の包み。バナナの葉で包まれている。これを開いていくとー
幾重もの厳重なバナナの葉の中から、鮮やかなピンク色の、小さな肉の固まりが出てきた。華奢な印象。幅2cm、長さ4cm、厚さ1cmほど。ベトナムではネムチュア、ラオスではソムムーと呼ばれるこの発酵ソーセージが今回の主役だ。
上の一連の写真とすぐ下の写真がラオスで見たもの。その下はベトナム。ベトナムの方がうまそうに見えるかもしれないが、味はほとんど同じ。ラオスでこの時食べたものは豚皮の配合が多かったように思う。
あるHPのレシピによると、発酵ソーセージの材料は次のようになっている。
豚肉赤身 1 ポンド、薄切り
塩 小さじ1
砂糖 小さじ2
魚醤 1/4 カップ
豚皮 4 オンス
ニンニク 3片(つぶしたもの)
サラダ油 大さじ2
焼いた米の粉 1/2 カップ
バナナの葉
ニンニク 2片(スライス)
赤唐辛子 1本(スライス)
ポイントは、米粉を入れていること。前々回の魚の発酵食品を思い出していただきたい。米粉は、乳酸菌が増えるのに必要なエネルギーを提供する。乳酸によってこの発酵ソーセージがどのくらいの酸度になっているのか、実際に測ったわけではないが、だれが食べても酸味を感じる程度にはすっぱい。
米粉以外には、豚皮、ニンニク、唐辛子が入る。唐辛子やニンニクは、まるで魔除けのように、ひとかけらが丸ごと入っていたりする。魔除けと書いたのは、ニンニクも唐辛子も、味だけでなく、その殺菌力に期待しているから。
それにしても、厳重な包装だ。たんに中身を物理的に保護するためだけなら、もう少し省略してもいいだろう。厚ごろもの安い天ぷらみたい、なんていう悪口さえ聞こえてきそう。
だが、実は、必要があって幾重にもバナナの葉を重ねているのだ。表面を外気に少しでもさらしたら、外からの微生物の攻撃で豚肉はすぐ腐敗してしまう。考えてみてほしい。熱帯の30度近い常温に生肉を置くのだ。よほど厳重に守らなければ、肉は腐敗菌にたちまちやられてしまう。そこで、バナナを何枚も重ねてまるで「ふとん蒸し」のようにする。
バナナの葉の役割は、外気を物理的に遮断することだけではない。バナナの葉の表面には、天然のクモノスカビがたくさんついている。バナナの歯で幾重にも包むのは、腐敗菌との戦いで負けないようにするためにクモノスカビ歩兵師団を大量に送り込む意味がありそうだ。
カビ、と聞いて「肉の敵じゃないのか」と思われるかもしれないが、クモノスカビの一部は、コウジカビと同様、人に利益をもたらす。バナナの葉のクモノスカビをスターターにする発酵食品はアジアにいろいろある。
例えば、日本でもすっかりおなじみになったインドネシアの大豆発酵食品テンペがまさにそれ。納豆では、煮た大豆を稲ワラに包んで発酵させるが、テンペは、煮た大豆をバナナの葉に包む。バナナの葉のクモノスカビが発酵を進め、大豆をテンペに変えてくれる。
発酵食品までいかずとも、バナナが豊富な地域では、バナナの葉をさまざまな形で腐敗防止に使う。バナナの葉は、鮮魚を売る時の下敷きにしたり、ちまきのようなお菓子を巻いて保存を図ったりもする。バナナの葉は、いってみれば「抗菌」包装資材として広く流通している。
発酵ソーセージでは、バナナの葉の内側にも、また別の葉が巻かれている。芳香をつけるとともに、発酵促進に役立つ、とラオスの知人が教えてくれた。ベトナムではこの葉の情報を得られなかったが、ラオスではナンヨウユカン、別名アメダマノキと呼ばれる木の葉を使う。
発酵ソーセージは生で食べることもあれば、焼いて食べることもある。おやつとしてもおかずとしても食べるが、焼いたものはさらに味が際立って、モチ米やビールが欲しくなる。前々回の発酵した魚パーソムと同じく、少量口に入れれば十分おいしい。
バナナにしっかり保護されて発酵した深い味。機会があればぜひお試しを。
発酵ソーセージのさらに科学的な情報に興味がある方は、大妻女子大の大森正司教授がアジアの発酵ソーセージに関する研究論文をいくつか出しているので、そちらをどうぞ。
前回までは魚の発酵食品についてつづってきた。今回は豚肉の発酵食品を取り上げよう。
直径5cm、長さ8cmくらいの俵状の包み。バナナの葉で包まれている。これを開いていくとー
幾重もの厳重なバナナの葉の中から、鮮やかなピンク色の、小さな肉の固まりが出てきた。華奢な印象。幅2cm、長さ4cm、厚さ1cmほど。ベトナムではネムチュア、ラオスではソムムーと呼ばれるこの発酵ソーセージが今回の主役だ。
上の一連の写真とすぐ下の写真がラオスで見たもの。その下はベトナム。ベトナムの方がうまそうに見えるかもしれないが、味はほとんど同じ。ラオスでこの時食べたものは豚皮の配合が多かったように思う。
あるHPのレシピによると、発酵ソーセージの材料は次のようになっている。
豚肉赤身 1 ポンド、薄切り
塩 小さじ1
砂糖 小さじ2
魚醤 1/4 カップ
豚皮 4 オンス
ニンニク 3片(つぶしたもの)
サラダ油 大さじ2
焼いた米の粉 1/2 カップ
バナナの葉
ニンニク 2片(スライス)
赤唐辛子 1本(スライス)
ポイントは、米粉を入れていること。前々回の魚の発酵食品を思い出していただきたい。米粉は、乳酸菌が増えるのに必要なエネルギーを提供する。乳酸によってこの発酵ソーセージがどのくらいの酸度になっているのか、実際に測ったわけではないが、だれが食べても酸味を感じる程度にはすっぱい。
米粉以外には、豚皮、ニンニク、唐辛子が入る。唐辛子やニンニクは、まるで魔除けのように、ひとかけらが丸ごと入っていたりする。魔除けと書いたのは、ニンニクも唐辛子も、味だけでなく、その殺菌力に期待しているから。
それにしても、厳重な包装だ。たんに中身を物理的に保護するためだけなら、もう少し省略してもいいだろう。厚ごろもの安い天ぷらみたい、なんていう悪口さえ聞こえてきそう。
だが、実は、必要があって幾重にもバナナの葉を重ねているのだ。表面を外気に少しでもさらしたら、外からの微生物の攻撃で豚肉はすぐ腐敗してしまう。考えてみてほしい。熱帯の30度近い常温に生肉を置くのだ。よほど厳重に守らなければ、肉は腐敗菌にたちまちやられてしまう。そこで、バナナを何枚も重ねてまるで「ふとん蒸し」のようにする。
バナナの葉の役割は、外気を物理的に遮断することだけではない。バナナの葉の表面には、天然のクモノスカビがたくさんついている。バナナの歯で幾重にも包むのは、腐敗菌との戦いで負けないようにするためにクモノスカビ歩兵師団を大量に送り込む意味がありそうだ。
カビ、と聞いて「肉の敵じゃないのか」と思われるかもしれないが、クモノスカビの一部は、コウジカビと同様、人に利益をもたらす。バナナの葉のクモノスカビをスターターにする発酵食品はアジアにいろいろある。
例えば、日本でもすっかりおなじみになったインドネシアの大豆発酵食品テンペがまさにそれ。納豆では、煮た大豆を稲ワラに包んで発酵させるが、テンペは、煮た大豆をバナナの葉に包む。バナナの葉のクモノスカビが発酵を進め、大豆をテンペに変えてくれる。
発酵食品までいかずとも、バナナが豊富な地域では、バナナの葉をさまざまな形で腐敗防止に使う。バナナの葉は、鮮魚を売る時の下敷きにしたり、ちまきのようなお菓子を巻いて保存を図ったりもする。バナナの葉は、いってみれば「抗菌」包装資材として広く流通している。
発酵ソーセージでは、バナナの葉の内側にも、また別の葉が巻かれている。芳香をつけるとともに、発酵促進に役立つ、とラオスの知人が教えてくれた。ベトナムではこの葉の情報を得られなかったが、ラオスではナンヨウユカン、別名アメダマノキと呼ばれる木の葉を使う。
発酵ソーセージは生で食べることもあれば、焼いて食べることもある。おやつとしてもおかずとしても食べるが、焼いたものはさらに味が際立って、モチ米やビールが欲しくなる。前々回の発酵した魚パーソムと同じく、少量口に入れれば十分おいしい。
バナナにしっかり保護されて発酵した深い味。機会があればぜひお試しを。
発酵ソーセージのさらに科学的な情報に興味がある方は、大妻女子大の大森正司教授がアジアの発酵ソーセージに関する研究論文をいくつか出しているので、そちらをどうぞ。
2011年10月23日
歯応え麺と透明スープ
沖縄とアジアの食 第6回 フーティウ
前回のフォーに続いて、ベトナム麺を続けたい。今回は主に南部で食べられているフーティウ。写真はホーチミン市のタイビン市場に近いフーティウ屋のフーティウ。麺の歯応え、透明感のある琥珀色のスープとも申し分ない。
フーティウ屋の看板をよく見ると、フーティウナンバン、と書かれている。ナンバンはカンボジアの首都プノンペンのこと。プノンペン風フーティウ、といった意味合いらしい。
ホーチミンから南西に70kmほど行ったメコンデルタのティンザン省都ミトーが、フーティウ発祥の地とされる。この地域はカンボジアと同じクメール族が多く、彼らがフーティウを作り出したとされる。
フーティウにはいろいろな具が乗るが、一番シンプルなのは、だしをとるのに使った骨付きの豚肉をドカンと載せたもの。迫力満点で、麺よりもよほどボリュームがあるが、半分以上が骨なので、実際に食べる分量はそんなにドカンでもない。
アジア汁麺のお約束で、フーティウの場合も生野菜・香草が別皿でついてくる。手で適当なサイズにちぎってスープに放り込む。冒頭の写真の店では、セロリ、ニラ、モヤシなどが出てきた。セロリは日本で食べるものより、味も香りも強い。沖縄産のセロリが本土産よりも緑色が濃く、香りが強いのと似ている。
下の写真は、同じホーチミン市内の別のフーティウ屋。こちらの香草はシュンギクがメインで出てきた。シュンギクもベトナムでよく食べられる。
この店では豚肉を、麺と別に盛りつけてある。豚肉が多すぎて、麺の上に乗せると麺が押しつぶされるような印象になるのを避けるためだろう。野菜を含めると皿が3つもあって、普通なら1つのどんぶりに入って出てきそうな料理が、なんだがずいぶん豪華に見える。
麺のどんぶりには、麺以外に青ネギや揚げネギが散っている。スープはどこまでも透明。
さて、麺だが、こちらの写真を見てほしい。フォーとは全く違って、断面は正方形の角麺。太さ1mm角、といったところか。細くて繊細な麺だ。もちろん米麺だが、フォーがスープと一体になったヒラヒラ食感を楽しむのに対して、フーティウは歯ごたえがやや強い。
表現が難しいが、フーティウの歯ごたえは、歯を押し戻すような小麦麺のコシとは違う。前回、フォーの話で書いたように、アミロースでんぷん中心の長粒米が原料だから、粘りのようなものもほとんどない。とはいえ、一定の歯ごたえが感じられる。
製造工程を見たことはないが、書かれたものによると、フーティウにせよ、フォーにせよ、長粒種の米で作られる麺は、蒸してから冷ます際の冷まし方や乾燥方法によって歯ごたえが変わってくるらしい。
アミロースが多いでんぷんは、加熱によって糊化したでんぷんが、冷める過程で元に戻る「老化」が起きやすい。蒸した麺を冷ます過程を逆にうまく管理することで、あるレベルまで意図的に老化させ、目指す独特の歯ごたえを得ているのかもしれない。
それから、これは最近のことだろうと想像するが、米粉100%ではなく、タピオカ粉を少し混ぜているフーティウも売られていることが分かった。想像するに、ねらいは2つ。タピオカ独特の粘りを加えて、歯ごたえを強調したいのと、タピオカの方が値段が米より安いからだろう。
別の機会に詳しく取り上げたいと思っているが、タピオカでんぷんは、非常に個性的なでんぷん。独特の強い粘りがあるため、最近は、いろいろな麺や菓子類などに活用されている。
たとえば、日本では冷凍うどん。うどんは、本来は小麦100%で、小麦のグルテンによるコシが特徴なのだが、冷凍うどんのコシの一部は、実はタピオカでんぷんがもたらしている。あの、やや透明感を帯びた色合いも、タピオカでんぷんのなせる技だ。
話が脱線した。フーティウは、エビやレバーなどの具が乗ったタイプもよく見かける。生野菜・香草類をちぎって入れた後なので、散らかってしまっているが、実際に食べる時はこんな感じ。
スープは豚だしで、しつこさはまったくない。透明スープ好きにはたまらないおいしさ。
ただ、南部なので、味付けはやや甘め。もっとしょっぱいのが欲しい向きは、ベトナム式で、卓上のヌクマムを使うか塩を注文するかして、自分味に整えればいい。
かつてサイゴンと呼ばれたホーチミン市には、フーティウ屋があちこちにある。写真は、冒頭写真のフーティウを出す店。人気店のようで、食事時は混み合っている。
前回のフォーに続いて、ベトナム麺を続けたい。今回は主に南部で食べられているフーティウ。写真はホーチミン市のタイビン市場に近いフーティウ屋のフーティウ。麺の歯応え、透明感のある琥珀色のスープとも申し分ない。
フーティウ屋の看板をよく見ると、フーティウナンバン、と書かれている。ナンバンはカンボジアの首都プノンペンのこと。プノンペン風フーティウ、といった意味合いらしい。
ホーチミンから南西に70kmほど行ったメコンデルタのティンザン省都ミトーが、フーティウ発祥の地とされる。この地域はカンボジアと同じクメール族が多く、彼らがフーティウを作り出したとされる。
フーティウにはいろいろな具が乗るが、一番シンプルなのは、だしをとるのに使った骨付きの豚肉をドカンと載せたもの。迫力満点で、麺よりもよほどボリュームがあるが、半分以上が骨なので、実際に食べる分量はそんなにドカンでもない。
アジア汁麺のお約束で、フーティウの場合も生野菜・香草が別皿でついてくる。手で適当なサイズにちぎってスープに放り込む。冒頭の写真の店では、セロリ、ニラ、モヤシなどが出てきた。セロリは日本で食べるものより、味も香りも強い。沖縄産のセロリが本土産よりも緑色が濃く、香りが強いのと似ている。
下の写真は、同じホーチミン市内の別のフーティウ屋。こちらの香草はシュンギクがメインで出てきた。シュンギクもベトナムでよく食べられる。
この店では豚肉を、麺と別に盛りつけてある。豚肉が多すぎて、麺の上に乗せると麺が押しつぶされるような印象になるのを避けるためだろう。野菜を含めると皿が3つもあって、普通なら1つのどんぶりに入って出てきそうな料理が、なんだがずいぶん豪華に見える。
麺のどんぶりには、麺以外に青ネギや揚げネギが散っている。スープはどこまでも透明。
さて、麺だが、こちらの写真を見てほしい。フォーとは全く違って、断面は正方形の角麺。太さ1mm角、といったところか。細くて繊細な麺だ。もちろん米麺だが、フォーがスープと一体になったヒラヒラ食感を楽しむのに対して、フーティウは歯ごたえがやや強い。
表現が難しいが、フーティウの歯ごたえは、歯を押し戻すような小麦麺のコシとは違う。前回、フォーの話で書いたように、アミロースでんぷん中心の長粒米が原料だから、粘りのようなものもほとんどない。とはいえ、一定の歯ごたえが感じられる。
製造工程を見たことはないが、書かれたものによると、フーティウにせよ、フォーにせよ、長粒種の米で作られる麺は、蒸してから冷ます際の冷まし方や乾燥方法によって歯ごたえが変わってくるらしい。
アミロースが多いでんぷんは、加熱によって糊化したでんぷんが、冷める過程で元に戻る「老化」が起きやすい。蒸した麺を冷ます過程を逆にうまく管理することで、あるレベルまで意図的に老化させ、目指す独特の歯ごたえを得ているのかもしれない。
それから、これは最近のことだろうと想像するが、米粉100%ではなく、タピオカ粉を少し混ぜているフーティウも売られていることが分かった。想像するに、ねらいは2つ。タピオカ独特の粘りを加えて、歯ごたえを強調したいのと、タピオカの方が値段が米より安いからだろう。
別の機会に詳しく取り上げたいと思っているが、タピオカでんぷんは、非常に個性的なでんぷん。独特の強い粘りがあるため、最近は、いろいろな麺や菓子類などに活用されている。
たとえば、日本では冷凍うどん。うどんは、本来は小麦100%で、小麦のグルテンによるコシが特徴なのだが、冷凍うどんのコシの一部は、実はタピオカでんぷんがもたらしている。あの、やや透明感を帯びた色合いも、タピオカでんぷんのなせる技だ。
話が脱線した。フーティウは、エビやレバーなどの具が乗ったタイプもよく見かける。生野菜・香草類をちぎって入れた後なので、散らかってしまっているが、実際に食べる時はこんな感じ。
スープは豚だしで、しつこさはまったくない。透明スープ好きにはたまらないおいしさ。
ただ、南部なので、味付けはやや甘め。もっとしょっぱいのが欲しい向きは、ベトナム式で、卓上のヌクマムを使うか塩を注文するかして、自分味に整えればいい。
かつてサイゴンと呼ばれたホーチミン市には、フーティウ屋があちこちにある。写真は、冒頭写真のフーティウを出す店。人気店のようで、食事時は混み合っている。