豚重
2013年06月08日
豚重物語3―白ねぎと泡盛で甘くないタレ
豚重物語の最終回です。
炭火でしっかり焼いた肉の香りと味を主役に、ごはんものを作りたい、とは考えたものの、しゃぶしゃぶ肉でもダメ、固まりでもダメ。なかなかうまくいきません。
その時、一番最初のステーキのイメージを思い出しました。そうか、ステーキでは厚すぎてごはんとは絡まないけど、焼く時はそれでいいんじゃない? つまり、大きな固まりをいぶすのではなく、ステーキサイズの肉を普通に焼いてから冷まして、極薄にスライスするー。
固まりのようにスライスしやすくないですが、重ねてスライスすれば何とかなりそうです。

やってみたら、うまくいきました。焼かれた肉と脂がほどよくごはんに絡んで、紛うことなき炭火焼豚ごはんになっています。もはやベーコン丼ではありません。
炭火焼きする際の火の入れ方をぎりぎりの線にとどめることで、炭火焼の香りをたっぷり含んだ柔らかく、ジューシーな豚重ができました。
タレは? これは甘辛味ではもちろんダメなので、砂糖やみりんに頼らず、もっとストイックに組み立てることにしました。もちろん化学調味料は一切使いません。
ベースは醤油。これに、肉の旨味をわきから引き立ててくれる自然な甘味を期待して、白ねぎをたっぷり入れました。
次に泡盛。泡盛は、特に醤油と合わせると、独特の深い旨味が出ます。料理酒としての泡盛の実力はかなりのもの。もっと語られていいと思います。
隠し味に黒砂糖をちょっとだけ、甘さを感じない程度に入れました。黒砂糖には、甘み以外に、渋みなど複雑な味があるので、それにも期待しました。
結果は上々。豚肉のうまみとごはんの甘味をうまくつないでくれる「甘くないタレ」になりました。

先々週のこと。梅雨入りしてあいにくの天気の中、9人のグループが来られ、全員、豚重をご注文。実は豚重好きの常連さんが、本土からのお客様を引き連れて、のご来店でした。
「沖縄に来たらこれを食べてもらわなくては、ということでお連れしたんですよ」。たいへん嬉しい一言でした。
炭火でしっかり焼いた肉の香りと味を主役に、ごはんものを作りたい、とは考えたものの、しゃぶしゃぶ肉でもダメ、固まりでもダメ。なかなかうまくいきません。
その時、一番最初のステーキのイメージを思い出しました。そうか、ステーキでは厚すぎてごはんとは絡まないけど、焼く時はそれでいいんじゃない? つまり、大きな固まりをいぶすのではなく、ステーキサイズの肉を普通に焼いてから冷まして、極薄にスライスするー。
固まりのようにスライスしやすくないですが、重ねてスライスすれば何とかなりそうです。

やってみたら、うまくいきました。焼かれた肉と脂がほどよくごはんに絡んで、紛うことなき炭火焼豚ごはんになっています。もはやベーコン丼ではありません。
炭火焼きする際の火の入れ方をぎりぎりの線にとどめることで、炭火焼の香りをたっぷり含んだ柔らかく、ジューシーな豚重ができました。
タレは? これは甘辛味ではもちろんダメなので、砂糖やみりんに頼らず、もっとストイックに組み立てることにしました。もちろん化学調味料は一切使いません。
ベースは醤油。これに、肉の旨味をわきから引き立ててくれる自然な甘味を期待して、白ねぎをたっぷり入れました。
次に泡盛。泡盛は、特に醤油と合わせると、独特の深い旨味が出ます。料理酒としての泡盛の実力はかなりのもの。もっと語られていいと思います。
隠し味に黒砂糖をちょっとだけ、甘さを感じない程度に入れました。黒砂糖には、甘み以外に、渋みなど複雑な味があるので、それにも期待しました。
結果は上々。豚肉のうまみとごはんの甘味をうまくつないでくれる「甘くないタレ」になりました。

先々週のこと。梅雨入りしてあいにくの天気の中、9人のグループが来られ、全員、豚重をご注文。実は豚重好きの常連さんが、本土からのお客様を引き連れて、のご来店でした。
「沖縄に来たらこれを食べてもらわなくては、ということでお連れしたんですよ」。たいへん嬉しい一言でした。
2013年06月02日
豚重物語2―豚しゃぶ肉もダメ、固まりもダメ
炭火で焼かれた肉の最高の味と香りを活かしながら、肉とごはんを一体化させるにはどうしたらいいかー。豚肉のごはんものを組み立てるうえで、これが大きな課題でした。

当時、既にしゃぶしゃぶ用のスーチカーを製造していました。向こう側が透けて見えるくらいに極薄にスライスした微塩熟成の三枚肉です。この薄さなら、口の中でごはんと一体になってくれるんじゃないか。
早速、豚しゃぶ肉を炭火で焼いてごはんに乗せてみました。期待通り、ごはんとの一体感はばっちりです。
ただ、一つ、大きな問題がありました。それは、あまりに肉が薄すぎて、火の通りが均一にならないことです。
極薄切りの肉を1枚ずつ焼くことはできませんから、何枚かまとめて焼くことになりますが、重なり具合によって厚さや大きさがまちまちになり、火の通りがなかなか均一になりません。ある部分は焼き足りないのに、他の部分は焼き過ぎて焦げたり、肉汁が出てパサパサになったり。
考えてみれば、炭火の側も、ガス火のように火力が均一とは言えないわけです。「でこぼこ」が激しい。
じゃあ、大きな固まりのままじっくり焼いてから、スライスしたらどうだろう、と考えてやってみました。
薄切りにした後に炭火焼の香りがしっかり立つようにするには、よほど時間をかけてじっくりいぶし焼きのようにしなければなりません。なにしろ厚さが5、6センチもある三枚肉の大きな固まりです。煙を逃さないようにカバーしながら、弱火でじっくり焼きました。
ベーコンのような、きつね色の固まりができ上がりました。早速、薄切りにして、ごはんの上へ。
これはこれでおいしいのですが、「周囲がいぶされている」というまさにベーコンの感じで、「炭火で焼いた肉」というのはどうも違います。
ベーコン丼、か。それもいいけど、なんかちょっと違うなあ。
模索が続きます。

当時、既にしゃぶしゃぶ用のスーチカーを製造していました。向こう側が透けて見えるくらいに極薄にスライスした微塩熟成の三枚肉です。この薄さなら、口の中でごはんと一体になってくれるんじゃないか。
早速、豚しゃぶ肉を炭火で焼いてごはんに乗せてみました。期待通り、ごはんとの一体感はばっちりです。
ただ、一つ、大きな問題がありました。それは、あまりに肉が薄すぎて、火の通りが均一にならないことです。
極薄切りの肉を1枚ずつ焼くことはできませんから、何枚かまとめて焼くことになりますが、重なり具合によって厚さや大きさがまちまちになり、火の通りがなかなか均一になりません。ある部分は焼き足りないのに、他の部分は焼き過ぎて焦げたり、肉汁が出てパサパサになったり。
考えてみれば、炭火の側も、ガス火のように火力が均一とは言えないわけです。「でこぼこ」が激しい。
じゃあ、大きな固まりのままじっくり焼いてから、スライスしたらどうだろう、と考えてやってみました。
薄切りにした後に炭火焼の香りがしっかり立つようにするには、よほど時間をかけてじっくりいぶし焼きのようにしなければなりません。なにしろ厚さが5、6センチもある三枚肉の大きな固まりです。煙を逃さないようにカバーしながら、弱火でじっくり焼きました。
ベーコンのような、きつね色の固まりができ上がりました。早速、薄切りにして、ごはんの上へ。
これはこれでおいしいのですが、「周囲がいぶされている」というまさにベーコンの感じで、「炭火で焼いた肉」というのはどうも違います。
ベーコン丼、か。それもいいけど、なんかちょっと違うなあ。
模索が続きます。
2013年05月27日
豚重物語1―甘辛味でない豚ごはんを作りたい
ももと庵メニューの中で、根づよいファンを持つ炭火焼豚重について書いてみます。実際、何度も来られて必ず豚重、というお客様が結構いらっしゃるんです。

この豚重、ももと庵が開店するよりもずっと前に商品化が試みられました。肉みそなどの加工品の一環として、ごはんものを企画したのです。
きっかけは、狂牛病の影響で牛肉の入手が難しくなった牛丼チェーン各社が始めた豚丼でした。
牛丼各社の豚丼は、基本的には牛丼と同じタイプの甘辛味。それはそれでおいしいのですが、牛丼の二番煎じの印象は否めません。豚のごはんものはもっと違う切り口があってもいいのでは?という思いがムクムクと頭をもたげてきました。
甘辛味でない豚のごはんものが組み立てられないかー。
甘辛味でないとなると、やはり豚肉がじっくりと焼かれた時に漂うあの香りを前面に打ち出すしかありません。
肩ロースなど、ほどよく脂の乗った豚肉をじっくり焼くと、ラードと肉が加熱された時特有の、胃袋を激しく刺激する芳香が立ちのぼります。特に、炭で焼いたそれは、もう最高です。
東南アジア各地を歩いていても、焼かれた肉がおいしいのは、肉自体の味もさることながら、その多くが炭火焼きだから。

炭火焼の豚肉でいこうー。基本路線は固まりました。
ただ問題がひとつありました。
それは、肉がステーキのような状態では、ごはんとの絡み具合が今ひとつになってしまうことです。焼かれた肉は文句なしにうまいのですが、それがステーキの厚さ、大きさでは、噛みごたえ、味ともに肉の存在感が強すぎて、ごはんと一体になったおいしさを感じにくいんです。
さて、どうしたものか。続きは次回に。

この豚重、ももと庵が開店するよりもずっと前に商品化が試みられました。肉みそなどの加工品の一環として、ごはんものを企画したのです。
きっかけは、狂牛病の影響で牛肉の入手が難しくなった牛丼チェーン各社が始めた豚丼でした。
牛丼各社の豚丼は、基本的には牛丼と同じタイプの甘辛味。それはそれでおいしいのですが、牛丼の二番煎じの印象は否めません。豚のごはんものはもっと違う切り口があってもいいのでは?という思いがムクムクと頭をもたげてきました。
甘辛味でない豚のごはんものが組み立てられないかー。
甘辛味でないとなると、やはり豚肉がじっくりと焼かれた時に漂うあの香りを前面に打ち出すしかありません。
肩ロースなど、ほどよく脂の乗った豚肉をじっくり焼くと、ラードと肉が加熱された時特有の、胃袋を激しく刺激する芳香が立ちのぼります。特に、炭で焼いたそれは、もう最高です。
東南アジア各地を歩いていても、焼かれた肉がおいしいのは、肉自体の味もさることながら、その多くが炭火焼きだから。

炭火焼の豚肉でいこうー。基本路線は固まりました。
ただ問題がひとつありました。
それは、肉がステーキのような状態では、ごはんとの絡み具合が今ひとつになってしまうことです。焼かれた肉は文句なしにうまいのですが、それがステーキの厚さ、大きさでは、噛みごたえ、味ともに肉の存在感が強すぎて、ごはんと一体になったおいしさを感じにくいんです。
さて、どうしたものか。続きは次回に。