赤身

2008年06月23日

[第62話 食] 冷凍でない本マグロを楽しむ

 梅雨明けした沖縄は、今、生本マグロ(クロマグロ)の季節。マグロ好きは毎年、この時季を心待ちにしている。沖縄のマグロ漁は沖合100―150km付近の近海で行われるので、冷凍されない生の本マグロが味わえるからだ。写真は200kgクラスの頭。沖縄市泡瀬の沖縄市漁協に隣接する鮮魚店パヤオで見かけた。

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 沖縄近海で本マグロ漁をしているのは、那覇地区漁協や沖縄県近海マグロ漁協に所属する20隻ほどの小型船が中心。4月下旬頃から揚がり始めるが、はしりのものはセリ値がキロ1万円といった猛烈な値段がつくので、地元にはほとんど出回らない。これらは東京・築地に直送され、高級料亭などに流れるようだ。

 5月半ば頃から水揚げが増え、値が落ち着くと、地元に出回るようになる。それから7月の初旬くらいまでが沖縄の生本マグロのシーズンだ。

 案外知られていないが、沖縄で水揚げされる魚種は実はマグロ類がトップ。全水揚げ量の約半分を占める。ただしこれは本マグロだけでなく、キハダやビンチョウなど、すべてを含む。既に述べたように、本マグロが揚がる時期は初夏の2カ月強だけだ。

 本マグロの多くが那覇の泊漁港に上がるので、漁港内に設けられた沖縄鮮魚卸流通協同組合の共同販売施設「泊いゆまち」に行けば、トロでも赤身でも、お好みのものが好きなだけ買える。いゆまちの「いゆ」は「うお」のこと。写真はその泊いゆまちの中でも、本マグロをたくさんそろえている有限会社カネヤマ水産のまぐろや本舗。

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 下の写真は業務用のブロックで、棚の一番上のものは1尾300kgの大物から切り分けた20kg前後の固まり。客のニーズによって、これを1kg単位で切ってくれる。店長の當山清史さんは板前出身。使う側として培ったプロの目でマグロの質を鋭く見分ける。「ことしは残念ながら、量も質も今ひとつなんです」と當山さん。とはいえ、一般のマグロファンにしてみれば、ことしも生本マグロの魅力は十分に楽しめる。

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 マグロの魅力は2つ。一つは、いわずと知れたトロの脂のうまさ。もう一つはジューシーな赤身の香りの高さだ。これぞマグロの味、と言えるのは、むしろ赤身の味と香りではないだろうか。

 そんな「ピンの赤身」はありませんかと當山さんに聞いたら「すごいのが時々入ります。ただ、そういうのはだいたい高級なお寿司屋さんに行ってしまうんです」との答が。やはり本当にうまいものを手に入れるのは簡単ではないらしい。

 泊いゆまちの各店は、200―300gの食べやすい大きさのサクに切って売っている。現在の価格で、赤身が1000円前後、中トロで1500円前後といったところ。ピンの赤身には遠いが、中落ちはマグロらしい味がする。見栄えはあまりしないが、400gほど入って1000円とお買い得(下の写真)。
 
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 泊いゆまちは那覇市港町1-1-18、泊漁港内。098-868-1096。朝6時から夕方6時まで。いゆまちは旧盆と正月以外は無休だが、入居している各店舗はそれぞれ個別に休みを設けている。

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2007年12月17日

[第30話 食] どこまでもユニークな若狭のそば

 那覇の若狭にユニークな沖縄そば屋がある、と聞いて出かけた。その名は「若狭パーラー」。沖縄でパーラーと言えば、浜辺などで、プレハブやコンテナハウスで軽食やかき氷などを売っている店のこと。転じて、海辺ではない場所でも、簡単な建物で軽食を売る店を総称してパーラーと呼ぶ。たいがいのパーラーはそばも置いているが、出来合いの濃縮スープをお湯で薄めたような情けないそばを出すところも多い。さて、どんなものか―。半信半疑で若狭に赴いたら、ありました。

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 一見してそのユニークさが分かる店だった。若狭パーラーは、住宅街にある店主の自宅の一部を店にしている。店の部分が建物のギリギリのところにあり、客のすわるイスはその外側に置かれている。客席が店内にない、という意味では確かにパーラーだが、場所は砂浜ではなく、普通の住宅街なので、客席がまるで道路上にあるような、なんとも妙な構えになる。

 いや、正確に言えば、バーラーにはもともと客席はない。例えば海辺なら、客は、パーラーで買った食べ物を、自分の荷物を置いた場所などに持っていって、そこで食べる。若狭パーラーもそうした「パーラーの原則」に忠実なだけ。イスはサービスで置いているにすぎない。

 だが、驚くのはまだ早かった。行き交う車に背を向けて、豚肉そばを注文したら、こんなそばが登場した。

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 ヨモギの葉がオプションでついてくる店は時々見かける。第3話で紹介した美里そばもそうだった。ところが若狭パーラーでは、オプションではなく、初めからヨモギがたっぷり入っている。これはかなり珍しい。つゆの熱で鮮やかになったヨモギの緑と、立ち上る香りを楽しみながら、めんをすすり、つゆを飲む。

 あれ? 食べ始めて、「ユニーク」がもう一つあることに気づいた。そばの上に乗っている肉。沖縄そばと言えば、三枚肉かソーキ(あばら肉)を柔らかく煮付けたものが乗っていることが多いが、ここでは、赤身肉が乗っている。赤身だとどうしてもぱさぱさしがちだが、ここの肉は不思議なくらいしっとりと煮上がっている。

 赤身肉を入れるそば屋もないわけではないが、これほどつゆによく合う赤身肉の煮付けは、なかなかお目にかからない。これはタダモノではないな―。作り方を尋ねてみると、店主はさすがに口を濁した。かなり手の込んだ作り方をしているらしい。

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 コーレーグスもユニーク。コーレーグスといえば、小さな三角形をした赤い島唐辛子が泡盛に漬け込んである姿を思い浮かべるが、ここでは、それをミキサーにかけてすりつぶした赤いペースト状のものが出てくる。普通のコーレーグスは泡盛の香りとトウガラシの辛さが基本になっているが、すりつぶしたコーレーグスは、唐辛子の香りが前面に出ていて、これはこれでなかなかうまい。ペーストの作り方も尋ねてみたが、これにも店主は口を濁した。

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 沖縄そばは、どんどんおいしくなっていると言われる。後発こだわり店の頑張りに、昔の名店もうかうかしていられない。そばの完成度は上がり、そばジョーグーたちは「理想的なそばの姿」をあれこれ語る。

 だが、若狭パーラーのように、そうした動きから離れたところで、わが道をいく店も健在だ。独自のこだわりの中にバランスのとれたおいしさを感じさせる若狭パーラーのそばは、沖縄そばの理想型が一つではないことを教えてくれる。

 若狭パーラーは那覇市若狭2-14-16。098-861-6492。営業時間は07:30から20:00まで。豚肉そば400円、卵焼そば400円など。

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