選挙
2009年08月23日
[第131話 沖縄] 定着した選挙の家族ポスター
いよいよ総選挙。沖縄でも運動が激しさを増してきた。最近の沖縄の選挙ポスターは、ひと昔前とはだいぶ違う。家族ポスターの話から。
一番上は沖縄3区、小渡亨候補。奥さんと一緒のポスターが目を引く。その次は沖縄1区、下地幹雄候補。こちらも奥さんとのツーショット。一番下は沖縄1区の国場幸之助候補。奥さんだけでなく、子供たちも含めて一家で登場だ。
家族ポスターが本格的に登場したのは、2006年の県知事選だった。この時、革新系は糸数慶子候補で、糸数さんとともにご主人がポスターに登場した。迎え討つ保守系の現職仲井真弘多候補は、娘と一緒のポスターが話題を呼んだ。結果は仲井真さんの勝利に終わったが、それ以後、選挙には家族ポスターがしばしば張り出されるようになった。
家族写真は、実のところ、政策とはあまり関係ない。国場さんのように、子供の写真の上に「子育て責任世代」と入れれば、子育て政策に力を入れるイメージが強まるが、もし政策を訴えるだけなら自分の子供を登場させなくてもいいはず。
やはり家族ポスターの一番のねらいは「この候補者は、愛情に満ちた常識的な家庭人です」というイメージをアピールすることだろう。政策うんぬん以前にまずはまともな人物かどうかを見極めたい、という有権者に大いにアピールするに違いない。沖縄は家族重視。言葉で政策を語る以前に「常識的な家庭人」であることが求められる。
だが、家族ポスターには、一方で「やりすぎ」「家族の笑顔くらいでごまかされないゾ」という冷ややかな声があるのも事実。
そんな反応を意識してか、今回の総選挙では家族ポスターを全く出さない候補もいる。沖縄3区の玉城デニー候補はその一人。後援会によれば「考え方はいろいろあるでしょうけど、玉城の場合は家族ポスターを出す予定はありません」とのことだった。
ところで、昔ながらの沖縄の選挙ポスターと言えば、「カタカナで強調する」「名字よりも下の名前を強調する」の2点が特徴だ。
例えば、冒頭の3人の候補者のいずれも、姓名のいずれかをカタカナで書いている。確かに漢字ではあまり目立たないし、カタカナの方が読みやすい。
なぜひらがなではなく、カタカナなのか。万鐘の地元うるま市で若い人に聞いてみた。
ある女子高校生は「だって、それが選挙ポスターというものでしょ」と言った。彼女がものごごろついた頃から見てきた選挙ポスターはすべてカタカナ表記だったのだ。ある浪人生は「下の名前を大きく書いて強調する場合、ひらがなで書くと、幼稚園の子供みたいな感じがする」と。カタカナの方がひらがなより「しまり」があるのかもしれない。
沖縄トラディショナルとも言える選挙ポスターのカタカナ表記だが、実はこれにも大きな変化が見られる。
これは2008年の金武町の町議選、下はことしの那覇市の市議選。金武町のポスターでひらがな表記しているのは右下の「こはつ」さんと中央右下の「高し」さんだけ。カタカナ強調が圧倒的だ。ところが那覇市では、ひらがな強調がかなりある。
ヒマにまかせて数えてみた。金武町は、掲示板にポスターを貼っている候補者25人のうち、カタカナで姓名のいずれかを表記している人は22人。つまり全候補者の88%がカタカナ表記だった。
これに対して那覇市議選は、ポスターが貼られていた候補者66人のうち(写真は一部)カタカナ表記は33人で、カタカナ率は50%にガクンと落ちる。逆に、ひらがな表記は金武町の場合はわずか1人だったが、これが那覇市になると30人、45%に増える。
カタカナ表記ポスター全盛の中で、あえてひらがなを用いることで目立たせよう、と考える選対が都市部で増えてきたのか。あるいは、ふだん使わないカタカナより、なじみのあるひらがなで素直に表記した方がアピールすると考え始めたのか。
もう一つの特徴、「名字よりも下の名前を強調する」について。そもそも沖縄は、名字よりも下の名前で呼び合う社会で、これは選挙に限らない。学校や職場でも、かなりの人が下の名前を呼び合う。
数少ない姓に多くの人が集中しているので、姓を呼んでも区別できないことが多いからだ。農村部は特にそう。例えば旧石川市(現うるま市)字山城に行って「山城さーん」と呼んだら、ほぼ全員が手を挙げるのではないか。
那覇と金武のポスター掲示板で比べてみると、那覇は下の名前を強調している人が44%、金武は64%。これは都市部の方が姓が多様なため、姓を強調する人が多いからだろう。しかし先ほどの「カタカナか、ひらがなか」ほどの数字の開きはない。沖縄社会の実態を反映して、選挙でも下の名前を強調する伝統は、都市部を含めて健在のようだ。
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一番上は沖縄3区、小渡亨候補。奥さんと一緒のポスターが目を引く。その次は沖縄1区、下地幹雄候補。こちらも奥さんとのツーショット。一番下は沖縄1区の国場幸之助候補。奥さんだけでなく、子供たちも含めて一家で登場だ。
家族ポスターが本格的に登場したのは、2006年の県知事選だった。この時、革新系は糸数慶子候補で、糸数さんとともにご主人がポスターに登場した。迎え討つ保守系の現職仲井真弘多候補は、娘と一緒のポスターが話題を呼んだ。結果は仲井真さんの勝利に終わったが、それ以後、選挙には家族ポスターがしばしば張り出されるようになった。
家族写真は、実のところ、政策とはあまり関係ない。国場さんのように、子供の写真の上に「子育て責任世代」と入れれば、子育て政策に力を入れるイメージが強まるが、もし政策を訴えるだけなら自分の子供を登場させなくてもいいはず。
やはり家族ポスターの一番のねらいは「この候補者は、愛情に満ちた常識的な家庭人です」というイメージをアピールすることだろう。政策うんぬん以前にまずはまともな人物かどうかを見極めたい、という有権者に大いにアピールするに違いない。沖縄は家族重視。言葉で政策を語る以前に「常識的な家庭人」であることが求められる。
だが、家族ポスターには、一方で「やりすぎ」「家族の笑顔くらいでごまかされないゾ」という冷ややかな声があるのも事実。
そんな反応を意識してか、今回の総選挙では家族ポスターを全く出さない候補もいる。沖縄3区の玉城デニー候補はその一人。後援会によれば「考え方はいろいろあるでしょうけど、玉城の場合は家族ポスターを出す予定はありません」とのことだった。
ところで、昔ながらの沖縄の選挙ポスターと言えば、「カタカナで強調する」「名字よりも下の名前を強調する」の2点が特徴だ。
例えば、冒頭の3人の候補者のいずれも、姓名のいずれかをカタカナで書いている。確かに漢字ではあまり目立たないし、カタカナの方が読みやすい。
なぜひらがなではなく、カタカナなのか。万鐘の地元うるま市で若い人に聞いてみた。
ある女子高校生は「だって、それが選挙ポスターというものでしょ」と言った。彼女がものごごろついた頃から見てきた選挙ポスターはすべてカタカナ表記だったのだ。ある浪人生は「下の名前を大きく書いて強調する場合、ひらがなで書くと、幼稚園の子供みたいな感じがする」と。カタカナの方がひらがなより「しまり」があるのかもしれない。
沖縄トラディショナルとも言える選挙ポスターのカタカナ表記だが、実はこれにも大きな変化が見られる。
これは2008年の金武町の町議選、下はことしの那覇市の市議選。金武町のポスターでひらがな表記しているのは右下の「こはつ」さんと中央右下の「高し」さんだけ。カタカナ強調が圧倒的だ。ところが那覇市では、ひらがな強調がかなりある。
ヒマにまかせて数えてみた。金武町は、掲示板にポスターを貼っている候補者25人のうち、カタカナで姓名のいずれかを表記している人は22人。つまり全候補者の88%がカタカナ表記だった。
これに対して那覇市議選は、ポスターが貼られていた候補者66人のうち(写真は一部)カタカナ表記は33人で、カタカナ率は50%にガクンと落ちる。逆に、ひらがな表記は金武町の場合はわずか1人だったが、これが那覇市になると30人、45%に増える。
カタカナ表記ポスター全盛の中で、あえてひらがなを用いることで目立たせよう、と考える選対が都市部で増えてきたのか。あるいは、ふだん使わないカタカナより、なじみのあるひらがなで素直に表記した方がアピールすると考え始めたのか。
もう一つの特徴、「名字よりも下の名前を強調する」について。そもそも沖縄は、名字よりも下の名前で呼び合う社会で、これは選挙に限らない。学校や職場でも、かなりの人が下の名前を呼び合う。
数少ない姓に多くの人が集中しているので、姓を呼んでも区別できないことが多いからだ。農村部は特にそう。例えば旧石川市(現うるま市)字山城に行って「山城さーん」と呼んだら、ほぼ全員が手を挙げるのではないか。
那覇と金武のポスター掲示板で比べてみると、那覇は下の名前を強調している人が44%、金武は64%。これは都市部の方が姓が多様なため、姓を強調する人が多いからだろう。しかし先ほどの「カタカナか、ひらがなか」ほどの数字の開きはない。沖縄社会の実態を反映して、選挙でも下の名前を強調する伝統は、都市部を含めて健在のようだ。
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