青果市場

2011年06月26日

畑からの情報が早いことが生命線

沖縄を創る人 第24回
 沖縄百姓の会代表 上地聴さん(上)


 農業はハイリスク、ローリターン。だから、企業は参入に二の足を踏むし、参入してもいつの間にか撤退していく例が多い。そんな中で八重瀬町、糸満市など主に南部の農家が集まる「沖縄百姓の会」は年商6億を着実に売り上げる。百姓の会を率いる上地聴さんに会った。

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 上地さんはJAに勤務した後、独立。自分で野菜を生産しながら仲間を増やし、生産物の販路を徐々に拡げていった。百姓の会は、トマト、キュウリ、レタス、エダマメと、売れるものはなんでも作る。

 農業は、天候に左右されるし、病虫害にもやられやすい。市場価格は乱高下するから、安定した利益を上げるのは簡単ではない。百姓の会では、農家が売りたい価格を決め、それをベースに、会が販売先と交渉するのが基本。

 「席を空けて待っていてもらうわけです」と上地さん。

 農家は売上の見通しが立つ。相手も仕入れの計画ができる。一時的に相場が上がったからといって、約束を守らず、横流しするような会員農家には厳しい姿勢でのぞむ。そこをなあなあにしたら信頼は決して得られない、上地さんはそう考えている。

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 では、一般の農産物流通業者と百姓の会とはどこが違うのか。

 「例えば、買い手の卸業者から、こういう野菜がもう少し欲しいんだけど、という急な話が入ったとします」
 
 スーパーなどでの農産物の販売は、計画通りにいかないことが多い。販売量が見込みを大幅に上回ることもある。「○○が欲しいけど、ないか」という急な話は日常茶飯事だ。

 そんな時、卸業者の多くは青果市場を探す。そこにたまたま欲しいものがあればいいが、求める品質のものがいつもあるとは限らない。

 直接の農家ネットワークを持っている卸業者の場合は、市場頼みの業者よりも、生産現場の近くにいることは確か。だが、彼らが畑の状態を把握するのはそう簡単ではない。1週間前には何ともないと思っていた野菜畑であれよあれよという間に病気が広がるというようなことはよく起きる。1、2度の気温差が実りの時期を早めたり遅くしたりすることも。

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 時々刻々変化するのが畑というもの。そもそも卸業者は生産技術のことはよく分かっていないから、こういう気象条件なら何が起きるか、といったテクニカルな予測を立てることはできない。

 「百姓の会は、メンバーが百姓です。メンバーの畑で何が起きているか、最新情報を逐一把握しています。お客さんから急な話が入っても、それに応えられるのは、どこのだれの畑か、すぐ分かります」

 あるのか、ないのか。あるなら、何がどれくらい手に入るのか。こうした情報こそが、商取引をするうえで信頼を勝ち取る基本になる。買い手の卸業者も、数多くの小売店のニーズに応えて初めて信頼を得られる立場にあるから、信頼に足る早い情報はノドから手が出るほどほしい。

 百姓の会は「畑からの情報が早い」(上地さん)。当事者にしか分からない最新の現場情報が、百姓の会の最大の強みだ。「農家が生き残れるとしたら、この部分しかないと思います」とまで上地さんは言う。

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 顧客とのそういう関係を続けているから、会員農家も買い手のことを常に考えるようになる。お客さんが欲しがる農産物、つまり「売れる農産物」を作ることに全力を傾注する結果になる。

 農産物だから、出来すぎ、穫れすぎ、もある。

 「ふだん相手の期待に応えようと努力しているから、こっちが困っている時は、お願いできないか、と言えるわけです」

 もちろん押し売りではない。あくまで、買い手のニーズに応える形で、だ。続きは7/3(日)に。


bansyold at 00:00|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック