2011年04月17日

開かれた半戸外空間で快適に

沖縄を創る人 第16回
 建築家、teamDream代表取締役 福村俊治さん(上)


 沖縄らしい住宅とはー。沖縄の気候、風土に合った住まい方について提案を続けてきた建築家の福村俊治さんを、那覇市の事務所に訪ねた。

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 「沖縄らしい住宅」と言えば、県外の人は、赤瓦屋根の伝統的民家を思い浮かべるかもしれない。だが、赤瓦といった素材や意匠の話の前に、沖縄で暮らすのに具合のよい住宅の機能とは何かを考えてみよう。

 福村さんが言う。「例えば、北欧は寒いですから、家を完全に閉め切ります。室内のインテリアのデザインに凝るので、家具などのインテリアが発達します。では、沖縄は? エクステリアですよ」

 エクステリアとは、門、扉、塀、物置、駐車場、フェンスなど家の外周りの設備とそれらが作り出す外観を一般に言う。家の外まわりのすべて、と考えればいい。

 沖縄は、蒸し暑い亜熱帯だが、島風が吹いているので、日陰ならば気温は32度くらいまでしか上がらない。だから、暑い時には、窓を開け放して風を入れたら気持ちよい。北欧のように密閉するのとは逆に、外に向かって家をどう開いていくかが家づくりのポイントになる、と福村さんは考える。

 確かに、沖縄の伝統的な住宅は、まさにこの部分に工夫を凝らしてきた。その一つが雨端(あまはじ)。雨端とは、軒に差し出した長めの庇(ひさし)とその下の空間を指す。雨と強い日差しを遮断し、快適な日陰を作る。壁がないので、内外が連続している。伝統家屋は玄関がないから、雨端は、外から来た人の接客の場にもなる。

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 「残念ながら、今の沖縄の民家の多くは、コンクリートの壁やサッシで完全に密閉して中をクーラーで冷やす、というものになっています」

 最近の沖縄は、建築に関しても東京発の情報が多く、いかに外に開くかといった沖縄独自の住まい方を前提にした情報は少ない。

 沖縄は台風銀座。台風の強風に耐えるという意味で、躯体に重量のある鉄筋コンクリートは優れている、と福村さんはみる。ならば、同じ鉄筋コンクリート造りで、完全密閉型ではない開放型の住宅を提案できないものかー。

 福村さんは、現代的な鉄筋コンクリートの民家に、開放的に暮らすのに都合のよい仕掛けを施してきた。パティオやテラスがそれだ。

 パティオとは、本来、スペインなどの住宅にある中庭のこと。この中庭にはタイルなどが貼られていることが多く、周囲に配置される食堂や応接室、居間などとのつながりが意識されている。

 テラスは、母屋部分から突き出した半戸外空間で、屋根があったり、なかったりする。パティオもテラスも、内外が連続する空間という意味で、雨端の機能とよく似ている。

 福村さんが設計した実例をみてみよう(写真は、いずれも福村さん撮影)。

 下の写真の家は、コンクリート造りのモダンな母屋の向かいに、伝統的な木造の離れが配置されている。2つの建物の中間部分が半戸外空間になっているのがミソ。写真のように、涼しい風を浴びてパーティーを開くことができる。

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 次の家は、きょうだいの住宅を向かい合わせにし、間の部分を中庭にした。敷地にゆとりがなかったので、中庭を共有することで敷地を節約しながら、半戸外の空間を楽しめるようにしたという。中庭には屋根がかかっていて、雨をよけつつ、爽やかな風を感じながら過ごすことができる。

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 福村さんが言う。「自然を感じられる生き方は豊かですよ」

 続きは4月24日(日)に。

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2010年03月29日

[第162話 食、南] 風で麺を締める

 第45話で紹介した沖縄そばづくりについて再び。今回は、製造工程の写真を中心にみてみよう。沖縄そばは生麺のまま流通しているのではなく「ゆで麺」で売られているが、それでもかなりのコシがある。ゆでて時間が経っても「のびない」のは、なぜだろうか。

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 沖縄県内では、沖縄そばの生麺は売られていない。少なくとも沖縄県民が普通に買い物をする小売店やスーパーにはない。沖縄そばは必ずゆで麺で売られている。名うての沖縄そば専門店も、ほぼ例外なくゆで麺を使う。

 東京のスーパーでも、うどんや中華麺のゆで麺が売られているが、コシ、歯ごたえという意味では、やはり生麺のゆでたてには一歩ひけをとる。これと対照的に、ゆでてだいぶ時間が経った沖縄そばのゆで麺には立派なコシがある。どうしたらあの独特のコシが持続するのだろうか。

 沖縄そばの製造工程を、豊見城市の亀浜製麺所で見せてもらった。こねた生地をのして細く切る。こね方、のし方も出来上がりのコシの強さに大きな影響を与えるが、今回はそこの話はパスして、ゆでた後、どうするかに焦点を絞ろう。

 亀浜製麺所では、鍋から引き上げた麺を作業台にさーっと広げて、扇風機の強風を当てながら、手早く植物油をふりかける。風であら熱をとりながら、同時に、油が全体に均一に回るように、麺をほぐしていく。ひたすら素早く、手早く。まさに職人芸というべき手作業だ。

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 ほぐされ、あら熱がとれた麺は、機械にかけられた形で、さらに扇風機の風にさらされ、完全に冷やされる。冷却は風で。そうめんを冷やすように水にさらすことはしない。このようにして作られた沖縄そばは、ゆでた後の処理で形成されたコシが4、5日は持続する。

 主役は風だ。風で冷やしながら、蒸気をどんどん飛ばしていくことで、水気を切る。この過程で麺が締まっていき、コシが出る。油は、ほぐしている間に麺同士がくっつかないようにするため。一定の水分を飛ばした後は、逆に麺の水分を守って、表面が乾かないようにする。

 こうしてゆでた後に脱水冷却処理された沖縄そばは、時間が経過するにつれて熟成が進み、ゆでたてのコシとは微妙に違う独特の噛み応えが出てくる。第45話で「ポクポクした感じ」と説明したが、まさにこれこそが沖縄そばにしかない独特の食感なのだ。

 話は変わる。汁麺の麺にはコシが必須と考えている人が日本には多いかもしれないが、コシのない汁麺もいろいろある。その多くは、沖縄そばと同じく、ゆで麺。

 例えばベトナム北部でよく食べられるフォー(写真上)は、ひらひらした米の麺で、コシらしきものは全く感じられないが、うまい。同じくベトナムでフォーよりもポピュラーな存在であるブン(写真下)も、米麺のゆで麺で、コシらしいコシはないが、いろいろな汁に入れるとやはりおいしい。

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 そもそも麺にしてコシが出るのは小麦のグルテンがあるから。米粉にはそういう成分はほとんどないから、コシは初めから期待できない。しかし、フォーやブンを食べていてつくづく思うのは、麺の厚さや幅、舌ざわり、水分の含有量といったコシ以外の要素が全体の食感に大きな影響を与えているということ。米麺では、コシがほとんどなくても、十分おいしく感じられる。

 日本では米の消費拡大のために米粉の活用が叫ばれているが、米麺でコシを出そうとするのはあまり意味がなさそうだ。それよりも、コシ以外の要素を研究し尽くして、汁によく合う米粉の麺を作り出そうとする方が前向きというもの。先輩格のおいしい米粉の汁麺は、インドシナ各国やタイに山ほどある。

bansyold at 20:59|PermalinkTrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

2007年11月18日

[第25話 沖縄] 中村家に流れる癒しの風

 北中城村(きたなかぐすくそん)の中村家は、上層農家の家構えがそのまま残る重要文化財。訪れる観光客も多い。文化財としての中村家の解説はほかに譲るとして、ここでは「風」の話を。

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 中村家を訪れると、畳の間に上がり込んで、そこを流れる風に身を任せながら、放心状態気味の表情でたたずんでいる人をよく見かける。暑い日でも、この家の中は何とも言えぬ心地よい風が流れている。

 中村家は、山の南斜面に位置しているため、北からの強風がまともにぶつかることはない。南からの強風は、家の外側に密に植えられたフクギや(下の写真の上)、南向きの正面入り口をふさぐように置かれている目隠し「ひんぷん」でかなり緩和される(下の写真の下)。

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 こうして家に当たる前にマイルドになった風を家の中に取り込むについては、今度は逆に、できるだけ多くの風が家の奥まで流れ込むように建物が作られている。

 まず、壁らしい壁がないので、雨戸を開け、障子を開け放てば、外と内はほぼ一体の空間になる。その開放感は、柱と屋根しかない庭園のあずま屋に近い。この内外一体感については、第7話の万国津梁館の記事でも紹介した。

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 一部には格子戸があるが、5cm幅の板が5cm間隔で入った戸が2枚重なっているので、日当りの強い時には、これを5cmずらせば、光はほとんど遮ることができる。だが、2枚の戸の間には1cmほどの隙き間があるので、光は遮断しても、風はその隙き間を通って建物内部にしっかり流れ込んでいく。

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 沖縄は海に囲まれた島なので、ほぼどこでも、海のミネラルをたっぷり含んだ風が吹いている。塩分を含む空中浮遊ミネラルは本土の10倍、強風時には100倍、という大手電器メーカーの調査結果があるほどだ。

 ミネラルは命の源。たっぷりのやわらかな風に乗ってそのミネラルが室内に流れ込み、体を包む時、体が「癒し」を感じて、そのあまりの心地よさに放心状態になるのではないだろうか。コンクリートとサッシで外気を完全に遮断し、中は冷房で冷やすのでは、「癒しの風」は感じられない。

 中村家は北中城村大城106、098-935-3500。年中無休で、午前9時から午後5時半まで。観覧料は大人500円、中高生300円、小学生200円。

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