魚
2013年10月09日
お魚メニュー、初登場!
2つ連続して来襲した台風が過ぎ去りました。だいぶ涼しくなって、食欲がふつふつと湧いてくる季節。ももと庵初のお魚メニューのお知らせです。
肉もいいけど魚も食べたいねー。リピーターのお客様からしばしば寄せられていたご要望にお応えしました。
魚メニューの記念すべき第1号ですから、思い切って、沖縄を代表する最高級魚のミーバイ(ハタ)でいってしまうことにしました。値はちょっと張りますが、すばらしくおいしい魚です。
白身でありながら脂がたっぷりのり、やわらかい身には適度な繊維質の歯ごたえがあり、とろとろした皮のゼラチンも最高!
刺身、鍋、魚汁、なんでもござれのミーバイですが、ももと庵はこれを唐揚げにしました。魚醤や生姜の特製タレにつけて粉をまぶし、サクサクに揚げました。
ミーバイは、沖縄のみならず、アジア各地でも高級魚として大いに珍重されています。アジア式をうたうももと庵にうってつけの素材。
ミーバイにはたくさんの種類があります。ももと庵は、近くの宮城島のサンゴの青い海で養殖されているアーラミーバイを起用。宮城島のアーラミーバイについては、このブログでしばらく前に取り上げましたので、こちらをごらん下さい。
これまでの膳メニューと同様に、いくつかの個性的な副菜がわきを固めます。ミニデザートと、コーヒーまたは紅茶がついて1550円。
お魚に目がないという方、大切な人ととっておきのランチを楽しもうという方、沖縄の海の味を堪能したい方。ぜひぜひお試しください。
ただし、きょうは定休日。明日から、ミーバイがご来店をお待ちしていますよ。
肉もいいけど魚も食べたいねー。リピーターのお客様からしばしば寄せられていたご要望にお応えしました。
魚メニューの記念すべき第1号ですから、思い切って、沖縄を代表する最高級魚のミーバイ(ハタ)でいってしまうことにしました。値はちょっと張りますが、すばらしくおいしい魚です。
白身でありながら脂がたっぷりのり、やわらかい身には適度な繊維質の歯ごたえがあり、とろとろした皮のゼラチンも最高!
刺身、鍋、魚汁、なんでもござれのミーバイですが、ももと庵はこれを唐揚げにしました。魚醤や生姜の特製タレにつけて粉をまぶし、サクサクに揚げました。
ミーバイは、沖縄のみならず、アジア各地でも高級魚として大いに珍重されています。アジア式をうたうももと庵にうってつけの素材。
ミーバイにはたくさんの種類があります。ももと庵は、近くの宮城島のサンゴの青い海で養殖されているアーラミーバイを起用。宮城島のアーラミーバイについては、このブログでしばらく前に取り上げましたので、こちらをごらん下さい。
これまでの膳メニューと同様に、いくつかの個性的な副菜がわきを固めます。ミニデザートと、コーヒーまたは紅茶がついて1550円。
お魚に目がないという方、大切な人ととっておきのランチを楽しもうという方、沖縄の海の味を堪能したい方。ぜひぜひお試しください。
ただし、きょうは定休日。明日から、ミーバイがご来店をお待ちしていますよ。
2013年09月09日
おいしいアジアへようこそ
泡盛とアジア米酒の後編の前に、ちょっと割り込みで、お知らせです。暑さも一段落して、ダウン気味だった食欲がよみがえる季節ですね。ももと庵では、初めてのスペシャルイベントを企画しました。
ちょっと珍しくてあきれるほどうまいアジア料理を実際に味わいながら、その素材や調理法、沖縄との共通点をめぐるトークを楽しんでいただこうというミニイベントです。題して「おいしいアジアへようこそ」。
アジア料理は、素材、調味料、調理方法などに独特のものがあって、鮮烈な味と香りが特徴です。ももと庵のキャッチフレーズは「おきなわの味、アジアの香り」。レギュラーメニューの中に、アジア料理の素材や技法を取り入れています。
そんなアジアの食には、沖縄料理との共通点がいろいろあります。
例えば豆腐。沖縄の豆腐は、固めのしっかりした豆腐ですね。本土の豆腐は水分が多くて柔らかいので、沖縄のように、チャンプルーにそのまま入れることはできません。アジア各国の多くでも、沖縄と同じ固いタイプの豆腐が食べられています。
ウチナーンチュが豆腐と言われてまず思い浮かべるのは、なんといっても揚げ豆腐じゃないでしょうか。揚げ豆腐は、重箱に入れてご先祖さまにお供えするごちそうの一つですね。
揚げ豆腐、アジアの各地でもいろいろな形で食べられています。「おいしいアジアへようこそ」では、珍しいベトナム風の揚げ豆腐を味わっていただく予定です。珍しいだけじゃないんです、たまげるおいしさ、ですよ。どんなものかは、当日のお楽しみ。
もう一つ。沖縄では、刺身を普通に醤油やわさび醤油でも食べますが、酢醤油や酢みそで食べる習慣もあります。たとえばイラブチャーの酢みそあえって、居酒屋などでもよく出てきますよね。
海産物豊富な島嶼国フィリピンにも、それとよく似た生魚の食べ方があるんです。「おいしいアジアへようこそ」では、フィリピン風の魚の酢じめを召し上がっていただく予定です。これも目からウロコのおいしさ、です。
というわけで、「おいしいアジアへようこそ」では、あまり知られていないおいしいアジア料理を3、4品、味わいながら、素材や調理法の背景、沖縄との共通点・違いについて、ライブトークを楽しんでいただきます。アジアの食の水先案内人は、ももと庵店主の小山敦史が務めます。
「おいしいアジアへようこそ」は、9/18(水)、9/25(水)のももと庵定休日のランチタイム2回と、10/4(金)のディナータイムの3回、開催します。時間は9/18と9/25が12:00-13:30、10/4が18:30-20:00です。
毎回30人限定ですので、参加希望の方はももと庵に電話予約をお願いします。電話番号はこちら。アジア料理+ミニデザート+ドリンク+トークで1250円です。予約は先着順ですので、お早めにどうぞ。
ちょっと珍しくてあきれるほどうまいアジア料理を実際に味わいながら、その素材や調理法、沖縄との共通点をめぐるトークを楽しんでいただこうというミニイベントです。題して「おいしいアジアへようこそ」。
アジア料理は、素材、調味料、調理方法などに独特のものがあって、鮮烈な味と香りが特徴です。ももと庵のキャッチフレーズは「おきなわの味、アジアの香り」。レギュラーメニューの中に、アジア料理の素材や技法を取り入れています。
そんなアジアの食には、沖縄料理との共通点がいろいろあります。
例えば豆腐。沖縄の豆腐は、固めのしっかりした豆腐ですね。本土の豆腐は水分が多くて柔らかいので、沖縄のように、チャンプルーにそのまま入れることはできません。アジア各国の多くでも、沖縄と同じ固いタイプの豆腐が食べられています。
ウチナーンチュが豆腐と言われてまず思い浮かべるのは、なんといっても揚げ豆腐じゃないでしょうか。揚げ豆腐は、重箱に入れてご先祖さまにお供えするごちそうの一つですね。
揚げ豆腐、アジアの各地でもいろいろな形で食べられています。「おいしいアジアへようこそ」では、珍しいベトナム風の揚げ豆腐を味わっていただく予定です。珍しいだけじゃないんです、たまげるおいしさ、ですよ。どんなものかは、当日のお楽しみ。
もう一つ。沖縄では、刺身を普通に醤油やわさび醤油でも食べますが、酢醤油や酢みそで食べる習慣もあります。たとえばイラブチャーの酢みそあえって、居酒屋などでもよく出てきますよね。
海産物豊富な島嶼国フィリピンにも、それとよく似た生魚の食べ方があるんです。「おいしいアジアへようこそ」では、フィリピン風の魚の酢じめを召し上がっていただく予定です。これも目からウロコのおいしさ、です。
というわけで、「おいしいアジアへようこそ」では、あまり知られていないおいしいアジア料理を3、4品、味わいながら、素材や調理法の背景、沖縄との共通点・違いについて、ライブトークを楽しんでいただきます。アジアの食の水先案内人は、ももと庵店主の小山敦史が務めます。
「おいしいアジアへようこそ」は、9/18(水)、9/25(水)のももと庵定休日のランチタイム2回と、10/4(金)のディナータイムの3回、開催します。時間は9/18と9/25が12:00-13:30、10/4が18:30-20:00です。
毎回30人限定ですので、参加希望の方はももと庵に電話予約をお願いします。電話番号はこちら。アジア料理+ミニデザート+ドリンク+トークで1250円です。予約は先着順ですので、お早めにどうぞ。
2011年11月20日
クサうまの親分、魚の塩辛
沖縄とアジアの食 第10回 魚の発酵食品(上)
今回はアジアの「クサうま味」の話をつづってみたい。まずはこの写真から。
ラオスの名物料理、唐辛子の効いた青パパイヤのサラダ「タムマクフーン」。青パパイヤのサラダと言えば、タイ料理の「ソムタム」が有名だが、ラオスや東北タイで食べられているこのタムマクフーンがいわば本家。
このタムマクフーンには、本家ならではの「こだわり」がある。バンコクや日本のタイ料理店で出てくるソムタムは、魚醤ナンプラーで味付けされているものが多いが、タムマクフーンは、魚の塩辛「パーデーク」を使う。東北タイなら「パーラ」。この魚の塩辛こそ、アジア「クサうま味」の親分のような存在だ。
パーデークはクサくてうまい。だから、ナンプラー味のすっきりソムタムよりも、パーデークを使うタムマクフーンの方が、味わい複雑で、奥深い。ラオスではもち米を主食に食べるが、タムマクフーンだけで立派にそのおかずになる。
青パパイヤは酵素パパインの働きで減量効果があると日本でも一時話題になった。不思議なことに、完熟の果物パパイヤになるとこの酵素はぐっと減ってしまうので、減量を期待する向きは青パパイヤを食べなければいけないらしい。
青パパイヤは沖縄でもよく食べる。万鐘本店でかつて紹介したように、沖縄では火を通してイリチャーで食べる。インドでは煮込み料理によく入れるらしい。東南アジアではタムマクフーンのように生で登場することが多いように思う。
ラオスの食堂やごはん系屋台では、やや縦長のすり鉢とすりこぎで突き混ぜながら、タムマクフーンをよく作っている。食事時になると、「トントン、トントン」と、青パパイヤを叩く音が聞こえてくる。青パパイヤは繊維が密で固いので、すりこぎで叩きながら、同時に調味料を染み込ませていく。その結果、固い青パパイヤが短時間でしなしなになる。
次の写真の右下のあたりに、トマト、唐辛子などとともに、茶色のパーデークのとろみを帯びた液が大さじ1杯ほど入れられているのが見える。これに青パパイヤを加えて、トントンと突きながら混ぜていく。
ラオスで普通に食べられているタムマクフーンは、かなり辛い。激辛へっちゃらの人以外は、唐辛子をわずかにしてもらうように頼んだ方がいいかもしれない。
さてさて、味付けに使われている魚の塩辛パーデークが、今回の本題だった。ラオスではどの町にもローカル市場があり、プラスチックの桶に入ったどろどろのパーデークが量り売りされている。
魚が発酵して身が溶けた状態。いかにも臭そうに見える。いや、実際、十分クサい。ただ、この臭いには、なんとも言えない懐かしさがある。眠っている記憶が呼び覚まされるような臭い。日本人におなじみの魚の干物やイカの塩辛と同種の香りの強烈バージョンだ。
その臭いが鼻に抜けた瞬間、うまみが口の中にバーッと広がる。魚の干物や塩辛などが好きな人にはたまらない味のはず。
ラオスは内陸国なので、川魚を使ってパーデークを作る。魚をよく洗ってぶつ切りにし、塩を混ぜながらかめに漬け込む。塩の量は、魚の1/3くらいというレシピが多い。塩に加えて、どのレシピにもヌカやモミ殻を入れるとある。
日本ではモミ殻と言えば文字通り殻だけだが、ラオスでは精米の方法が日本と違うため、モミ殻にヌカや小さな砕米が混ざっている。農村ではこれを鶏や豚の餌にする。つまり炭水化物やヌカ栄養が混ざったモミ殻、というものがあるのだ。
パーデークづくりの現場を見たわけではないが、使われる「モミ殻」もこれではないかと想像する。ヌカにはいろいろな菌がついているので、それがスターターになり、同時に砕米の炭水化物が発酵菌のエネルギー源として使われる、というわけだ。
漬け込み期間は1年以上。6カ月くらいから食べられるが、長く漬けた方がうまくなるという。
アジアのクサうま、と言えば、タイの「ガピ」もそうだし、ベトナムの「マムネム」もそう。この手の発酵クサうま食品は、料理に使われるだけでなく、つけダレとして小皿に入ってテーブルにもよく出てくる。複雑な香りと深い味わいをぜひお楽しみいただきたい。
今回はアジアの「クサうま味」の話をつづってみたい。まずはこの写真から。
ラオスの名物料理、唐辛子の効いた青パパイヤのサラダ「タムマクフーン」。青パパイヤのサラダと言えば、タイ料理の「ソムタム」が有名だが、ラオスや東北タイで食べられているこのタムマクフーンがいわば本家。
このタムマクフーンには、本家ならではの「こだわり」がある。バンコクや日本のタイ料理店で出てくるソムタムは、魚醤ナンプラーで味付けされているものが多いが、タムマクフーンは、魚の塩辛「パーデーク」を使う。東北タイなら「パーラ」。この魚の塩辛こそ、アジア「クサうま味」の親分のような存在だ。
パーデークはクサくてうまい。だから、ナンプラー味のすっきりソムタムよりも、パーデークを使うタムマクフーンの方が、味わい複雑で、奥深い。ラオスではもち米を主食に食べるが、タムマクフーンだけで立派にそのおかずになる。
青パパイヤは酵素パパインの働きで減量効果があると日本でも一時話題になった。不思議なことに、完熟の果物パパイヤになるとこの酵素はぐっと減ってしまうので、減量を期待する向きは青パパイヤを食べなければいけないらしい。
青パパイヤは沖縄でもよく食べる。万鐘本店でかつて紹介したように、沖縄では火を通してイリチャーで食べる。インドでは煮込み料理によく入れるらしい。東南アジアではタムマクフーンのように生で登場することが多いように思う。
ラオスの食堂やごはん系屋台では、やや縦長のすり鉢とすりこぎで突き混ぜながら、タムマクフーンをよく作っている。食事時になると、「トントン、トントン」と、青パパイヤを叩く音が聞こえてくる。青パパイヤは繊維が密で固いので、すりこぎで叩きながら、同時に調味料を染み込ませていく。その結果、固い青パパイヤが短時間でしなしなになる。
次の写真の右下のあたりに、トマト、唐辛子などとともに、茶色のパーデークのとろみを帯びた液が大さじ1杯ほど入れられているのが見える。これに青パパイヤを加えて、トントンと突きながら混ぜていく。
ラオスで普通に食べられているタムマクフーンは、かなり辛い。激辛へっちゃらの人以外は、唐辛子をわずかにしてもらうように頼んだ方がいいかもしれない。
さてさて、味付けに使われている魚の塩辛パーデークが、今回の本題だった。ラオスではどの町にもローカル市場があり、プラスチックの桶に入ったどろどろのパーデークが量り売りされている。
魚が発酵して身が溶けた状態。いかにも臭そうに見える。いや、実際、十分クサい。ただ、この臭いには、なんとも言えない懐かしさがある。眠っている記憶が呼び覚まされるような臭い。日本人におなじみの魚の干物やイカの塩辛と同種の香りの強烈バージョンだ。
その臭いが鼻に抜けた瞬間、うまみが口の中にバーッと広がる。魚の干物や塩辛などが好きな人にはたまらない味のはず。
ラオスは内陸国なので、川魚を使ってパーデークを作る。魚をよく洗ってぶつ切りにし、塩を混ぜながらかめに漬け込む。塩の量は、魚の1/3くらいというレシピが多い。塩に加えて、どのレシピにもヌカやモミ殻を入れるとある。
日本ではモミ殻と言えば文字通り殻だけだが、ラオスでは精米の方法が日本と違うため、モミ殻にヌカや小さな砕米が混ざっている。農村ではこれを鶏や豚の餌にする。つまり炭水化物やヌカ栄養が混ざったモミ殻、というものがあるのだ。
パーデークづくりの現場を見たわけではないが、使われる「モミ殻」もこれではないかと想像する。ヌカにはいろいろな菌がついているので、それがスターターになり、同時に砕米の炭水化物が発酵菌のエネルギー源として使われる、というわけだ。
漬け込み期間は1年以上。6カ月くらいから食べられるが、長く漬けた方がうまくなるという。
アジアのクサうま、と言えば、タイの「ガピ」もそうだし、ベトナムの「マムネム」もそう。この手の発酵クサうま食品は、料理に使われるだけでなく、つけダレとして小皿に入ってテーブルにもよく出てくる。複雑な香りと深い味わいをぜひお楽しみいただきたい。
2008年01月25日
[第37話 食] 屋良敦さんが教える魚のマース煮
マースは塩。「マース煮」を直訳すると「塩煮」になる。第23話で紹介したような塩焼きではない。煮るのだ。煮魚といえば、醤油やみりんで甘辛く煮たものが本土では多いようだが、沖縄ではこのマース煮がよく作られる。
甘辛い煮つけだと、味の主役は甘辛の煮汁で、魚の味はうまみとして煮汁の土台になる。が、マース煮の場合は、塩でデフォルメされた魚の香りと味がストレートに迫ってくるので、「魚を食べている」という実感がわく。同じ煮魚でも、甘辛味とはだいぶ違った味わいだ。
沖縄が誇る和食の名人、屋良敦さんに、マース煮の作り方を教えてもらった。まず、マース煮にする魚は白身の魚を使う。沖縄ではエーグワー(アイゴ)をよく使う。高級な魚ではないとされているが、面白いことに、マース煮にした時はこのエーグワーがとてもおいしい。固すぎず、柔らかすぎずのエーグワーの白身の食感が、塩で煮た時に引き立つようだ。
「魚は新鮮なものを使って下さい」と屋良さん。塩だけで煮るので、生臭ければそれがまともに出てしまうからだ。エーグワーは内蔵の苦みが強いので、すべて取り出して、腹の中をよく洗う。臭みが気になる場合は、さっと熱湯にくぐらせ、いわゆる霜降りにするとよい。
まず、魚が半分くらいひたる煮汁を作る。ここでは水2カップ、泡盛1カップに塩小さじ1前後を入れた。臭み消しの生姜を加え、煮立てる。魚を入れ、落としぶたをして中火で煮る。濃いめの味にしたければ昆布を敷いてもよいが、昆布なしでも十分おいしい。煮る時間は魚の大きさによるが、長さ25cmぐらいの魚で10分ほど。
魚は尾かしらつきが基本で、切り身ではあまりやらない。出来上がったら、塩味の煮汁をつけながら熱いうちに食べる。屋良さんは今回、特別に、魚の周囲にアーサをあしらって、地味な色のエーグワーの皿に彩りを添えてくれた。アーサは色だけでなく、その海の香りがマース煮を引き立てる。煮汁のうまみを味わうのにも、アーサがあると具合がいい。
酢じめしか食べ方がないコハダのように、エーグワーもマース煮以外にはおいしい食べ方がないのではないかと思わせる。実際、この魚を焼魚や唐揚げにして食べるという話は聞いたことがない。
マース煮は、高級魚ミーバイ(ハタ)でももちろんおいしい。ビタロー、アカマチなどでもいける。マース煮を経験したことのない人は、塩だけで煮るなんて、と思うかもしれないが、目からウロコのおいしさであること請け合い。一度お試しを。
甘辛い煮つけだと、味の主役は甘辛の煮汁で、魚の味はうまみとして煮汁の土台になる。が、マース煮の場合は、塩でデフォルメされた魚の香りと味がストレートに迫ってくるので、「魚を食べている」という実感がわく。同じ煮魚でも、甘辛味とはだいぶ違った味わいだ。
沖縄が誇る和食の名人、屋良敦さんに、マース煮の作り方を教えてもらった。まず、マース煮にする魚は白身の魚を使う。沖縄ではエーグワー(アイゴ)をよく使う。高級な魚ではないとされているが、面白いことに、マース煮にした時はこのエーグワーがとてもおいしい。固すぎず、柔らかすぎずのエーグワーの白身の食感が、塩で煮た時に引き立つようだ。
「魚は新鮮なものを使って下さい」と屋良さん。塩だけで煮るので、生臭ければそれがまともに出てしまうからだ。エーグワーは内蔵の苦みが強いので、すべて取り出して、腹の中をよく洗う。臭みが気になる場合は、さっと熱湯にくぐらせ、いわゆる霜降りにするとよい。
まず、魚が半分くらいひたる煮汁を作る。ここでは水2カップ、泡盛1カップに塩小さじ1前後を入れた。臭み消しの生姜を加え、煮立てる。魚を入れ、落としぶたをして中火で煮る。濃いめの味にしたければ昆布を敷いてもよいが、昆布なしでも十分おいしい。煮る時間は魚の大きさによるが、長さ25cmぐらいの魚で10分ほど。
魚は尾かしらつきが基本で、切り身ではあまりやらない。出来上がったら、塩味の煮汁をつけながら熱いうちに食べる。屋良さんは今回、特別に、魚の周囲にアーサをあしらって、地味な色のエーグワーの皿に彩りを添えてくれた。アーサは色だけでなく、その海の香りがマース煮を引き立てる。煮汁のうまみを味わうのにも、アーサがあると具合がいい。
酢じめしか食べ方がないコハダのように、エーグワーもマース煮以外にはおいしい食べ方がないのではないかと思わせる。実際、この魚を焼魚や唐揚げにして食べるという話は聞いたことがない。
マース煮は、高級魚ミーバイ(ハタ)でももちろんおいしい。ビタロー、アカマチなどでもいける。マース煮を経験したことのない人は、塩だけで煮るなんて、と思うかもしれないが、目からウロコのおいしさであること請け合い。一度お試しを。
2007年11月06日
[第23話 南、食] 焼魚再発見―アンゴラ風アジの塩焼き
新カテゴリー「南」を前回に続けてお届けする。今回は、琉球王国の貿易の舞台だった南シナ海からマラッカ海峡を抜けてインド洋を渡り、一気にアフリカまで行く。喜望峰を回った大西洋を北上したアンゴラが舞台。沖縄とも豚とも関係ないが、それはそれはおいしい南の話を仕入れたので、冷めないうちにアツアツをお伝えしたい。題して、アンゴラ風アジの塩焼き―。
能書きよりも、まずはその作り方からいこう。アンゴラ風アジの塩焼きは、たっぷりニンニクを使う。焼いた後はニンニク、ニンニクした味にはならず、ニンニクは裏方に回って深いうまみになるところが面白い。
まず、すり込むニンニク塩ペーストを作る。ニンニクを入れ、叩いて大まかに砕いたら、塩を加え、ジャリジャリとよくすりつぶしていく。
今回はアジだが、脂がのった大きめのイワシが手に入ったら、ぜひ試していただきたい。サンマでもおそらくいけるし、タチウオなどでやってもおいしいかもしれない。とにかく脂がノリノリにのっていることが条件だ。
魚の側面に、深さ4、5mmの切れ目を1、2本入れる。全体にニンニク塩ペーストをよくぬったうえで、この切れ目の中にもニンニク塩ペーストを詰める。これがコツ。
15分ほど室温にそのまま置いてニンニク塩をよくしみ込ませてから、炭火でじっくり焼く。都会のマンション暮らしの人はグリルかロースターで、となる。魚の厚さにもよるが、20分以上かけてゆっくりと焼きたい。
焼き上がりは、不思議なほどニンニクの突出した味がしない。ニンニク臭くもない。ニンニクは魚の中に入り込んで、魚の脂と一体になり、見事なうまみに変わっている。
アンゴラは旧ポルトガル領。この塩焼きもポルトガルの料理技術が伝えられた結果だという。そう言えば、ポルトガルには名物のイワシの塩焼きがあった。
アンゴラは、すぐ横をベンゲラ海流が北上する。アジ、タイセイヨウニシン、サバ、タチウオ、タイ、サワラ、イカ、タコなど、日本人にもおなじみの魚の宝庫。シイラやハタも上がる。もちろんアンゴラの人々は大の魚好きだ。
「こんなにおいしい塩焼きがあったのか」―。塩焼きの味はよく知っているはずの日本人が、驚きをもって再発見する塩焼き。一度お試しあれ。
能書きよりも、まずはその作り方からいこう。アンゴラ風アジの塩焼きは、たっぷりニンニクを使う。焼いた後はニンニク、ニンニクした味にはならず、ニンニクは裏方に回って深いうまみになるところが面白い。
まず、すり込むニンニク塩ペーストを作る。ニンニクを入れ、叩いて大まかに砕いたら、塩を加え、ジャリジャリとよくすりつぶしていく。
今回はアジだが、脂がのった大きめのイワシが手に入ったら、ぜひ試していただきたい。サンマでもおそらくいけるし、タチウオなどでやってもおいしいかもしれない。とにかく脂がノリノリにのっていることが条件だ。
魚の側面に、深さ4、5mmの切れ目を1、2本入れる。全体にニンニク塩ペーストをよくぬったうえで、この切れ目の中にもニンニク塩ペーストを詰める。これがコツ。
15分ほど室温にそのまま置いてニンニク塩をよくしみ込ませてから、炭火でじっくり焼く。都会のマンション暮らしの人はグリルかロースターで、となる。魚の厚さにもよるが、20分以上かけてゆっくりと焼きたい。
焼き上がりは、不思議なほどニンニクの突出した味がしない。ニンニク臭くもない。ニンニクは魚の中に入り込んで、魚の脂と一体になり、見事なうまみに変わっている。
アンゴラは旧ポルトガル領。この塩焼きもポルトガルの料理技術が伝えられた結果だという。そう言えば、ポルトガルには名物のイワシの塩焼きがあった。
アンゴラは、すぐ横をベンゲラ海流が北上する。アジ、タイセイヨウニシン、サバ、タチウオ、タイ、サワラ、イカ、タコなど、日本人にもおなじみの魚の宝庫。シイラやハタも上がる。もちろんアンゴラの人々は大の魚好きだ。
「こんなにおいしい塩焼きがあったのか」―。塩焼きの味はよく知っているはずの日本人が、驚きをもって再発見する塩焼き。一度お試しあれ。